地下2階とは思えない、吹き抜けの気持ちいいカフェ。
京都市左京区岡崎。ここは、〈京都市京セラ美術館〉〈京都国立近代美術館〉そして〈細見美術館〉などが立ち並ぶ、京都のアートの中心地。JR京都駅からはバスで30分ほどのこのエリアには平安神宮も近く、静かな時間が流れている。中でも〈細見美術館〉のカフェでは、アートセンスが遺憾なく発揮された空間で、小粋なイタリアンランチをいただけるという。
店は、入り口から階段を降りて“坪庭”のような広場へ降りたところに。ここ地下2階から地上3階まで続く吹き抜けの構造で、柔らかな光が注いでくる。ヨーロッパの街角を思わせつつ、どこか和の雰囲気も感じられるのは、建築が京町家をイメージしているからかもしれない。縦に長いガラス窓は、店内へと続くドア。
店内には、天井から和紙スクリーンの作品が飾られている。これは、京都府出身の和紙作家、堀木エリ子さんによるもの。現在は「東京ミッドタウン」「成田国際空港第一ターミナル到着ロビー」など大きな施設に飾られる作品や、「N.Y.カーネギーホール」で舞台美術を手掛けるなど国内外で活躍している。
ゆっくりと会話を楽しみながらも、おいしくいただけるパスタコース。
桜や紅葉の時期には特に賑わうという岡崎エリア。それでも地下2階のひんやりとした隠れ家のような雰囲気と、天井が高く解放感のある空間だから、ほっと一息つくことができる。開業時にはエントランスフリーのミュージアムカフェやショップは珍しかったそう。欧米の美術館を巡り、「敷居の高いイメージのある日本の古美術に親しむきっかけとなれば」と思い至った細見館長のアイデアだという。そして今ではカフェを目当てに訪れる人も増え、美術ファンのみならず、岡崎の憩いのスポットとしても根付いている。
人気のパスタコースをオーダーすると、まずは色とりどりの前菜とサラダが盛られたプレートが運ばれてきた。アンティパストを少しずつつまみながら、ゆっくりと会話を楽しもう。シンプルな味付けで、素材の旨味を堪能できる。
パスタは、万願寺唐辛子と筍のボロネーゼを選んだ。こうして、京都の食材がさりげなく使われているのがうれしい。ここで腕を振るうシェフは和食やフレンチを経験してきた料理人だという。どの料理にも和のテイストが感じられ、ソースへのこだわりなど、シェフのルーツが垣間見える。この日は他に、エビとほうれん草のトマトクリームや春キャベツとしらすのアーリオオーリオなど、季節の野菜を使ったメニューが並んでいた。
店一番のこだわりを聞いてみると、「パスタやピザのモチモチ具合」だという。会話に夢中になっているうちにたとえ冷めてしまっても「ずっとおいしい」ものを目指して、麺や生地をセレクトしているのだとか。たしかに、時間が経ったパスタでも固くならず、ツルツル・モチモチとした食感の良さを味わうことができた。
アートなプレートとドルチェでティーテイムを。
〈細見美術館〉は、江戸絵画の中でも特に伊藤若冲のコレクションで人気を博している。美術館オリジナルの若冲プレートに、手作りの塩キャラメルロールケーキを乗せた「若冲セット」はぜひいただきたい。ふんわりとした生地とクリームの周りを塩キャラメル味のチョコレートがコーティングしている。ドルチェは他にも、スフレクリームチーズケーキや木苺のミルフィーユなどがあり、カフェタイム目当てでも訪れたいラインナップ。
お供には紅茶がおすすめ。ここで扱うのはドイツの老舗「ロンネフェルト」。最高級品質と謳われるブランドで、紅茶好きの支持が厚いという。が、関西でも飲めるお店は少なく、ここで「ロンネフェルト」を知ったお客様が自身のカフェやレストランで出すようになったという話もあるとか。煎茶やアイリッシュウイスキーなどがフレーバリングされたフレーバーティーも注目。プラス50円でセットドリンクにすることも。
若冲セットにはポストカード付き。旅の思い出をしたためて、ここを誰かにおすすめしたくなる。
秘密にしておきたいサンクチュアリ。
このエリアには、美術館だけでなく府立図書館やみやこめっせ、ロームシアターなどの文化施設がたくさん。〈CAFÉ CUBE〉でゆったりと過ごしたら、あたりを散策するのもいい。
Text:Kahoko Nishimura
Photo:Natsumi Kakutoいつもと違う京都府観光には、京都市左京区岡崎の〈CAFÉ CUBE〉がおすすめ。
CAFÉ CUBE
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