日本のアートを現代に伝えるセレクトショップ。


ミュージアムショップをめぐる旅。今回の目的地は、京都の中でも美術館や公園が集まる文化的エリア、左京区岡崎にある〈細見美術館〉のショップだ。ここには、日本画モチーフのグッズや、和のクラフトが集められていて、センスのいい和雑貨を探すにはもってこい。

展示室をつなぐ廊下は中庭に通じ、外のフレッシュな空気に触れながら移動できる。途中には人気作品、神坂雪佳の『百々世草』より「狗児」のパネルも飾られていた(現在は撤去)。
展示室をつなぐ廊下は中庭に通じ、外のフレッシュな空気に触れながら移動できる。途中には人気作品、神坂雪佳の『百々世草』より「狗児」のパネルも飾られていた(現在は撤去)。

美術館全体の建築は、故 大江匡氏の設計による。京町家のようでいて、モダンな雰囲気が印象的。中央には坪庭のようなサンクンガーデンを造り、壁には左官の伝統技法「櫛目引き」を施している。ショップはその“坪庭”のある地下2階にある。建築にも魅了されつつ降りてみると、地上からの日差しも入り、ひんやりと気持ちのいい場所だ。

          

京都のものづくりとコラボレートした、小さなアート。


美術館では、実業家・細見古香庵に始まる細見家三代が蒐集した、日本の古美術を中心に企画展示を行っている。平安・鎌倉時代の仏教美術、茶の湯の美術から江戸時代の絵画まで、日本の美術史を物語るようにほとんどすべての分野、時代が網羅されているという。なかでも琳派や伊藤若冲などの江戸絵画のコレクションで注目され、ショップにも収蔵品をモチーフにしたオリジナルグッズが豊富にそろっている。

コラボレーションするのは、老舗から新進クリエイターまでさまざま。作品の魅力をさらに輝かせる、現代のクリエイターと出会わせてくれる。グラフィカルなデザインが素敵な「若冲ハンカチ」は京都出身で、呉服関係の家に生まれたアートディレクター・西岡ペンシル氏が手掛けたシリーズ。細見美術館が所蔵する伊藤若冲の作品にまた違った魅力が吹き込まれ、額装して飾っておきたくなるモダンさ。

細見コレクション 若冲ハンカチ各1,650円。広げたものは、伊藤若冲の「花鳥図押絵貼屏風」のカラスを幾何学模様と共に再構築した文様。
細見コレクション 若冲ハンカチ各1,650円。広げたものは、伊藤若冲の「花鳥図押絵貼屏風」のカラスを幾何学模様と共に再構築した文様。

近年人気が上昇してきた伊藤若冲は、江戸時代中期に錦小路にある青物問屋の長男として生まれ、独学で絵師の道へ進んだ奇才。超絶技巧と独特の感性で、奇想の絵師とも呼ばれる。“細見と言えば若冲”と称されるほど、美術館には若冲目当ての人も多く訪れるという。だから、オリジナルグッズだけでなくセレクトした若冲グッズはバリエーション豊かに揃っている。

日用品でありながら、ディスプレイしておきたくなるものがたくさん。こちらは、中村芳中の「仔犬」をモチーフにした豆皿で、作品から飛び出してきたような愛らしさに、思わずほっこり。作っているのは、江戸後期に五条坂で開かれた〈六兵衛窯〉。伝統的な京焼きを生かしつつ、今のライフスタイルにも合う陶器を作り続けている。和菓子や漬物などお茶請けをのせるのにぴったりなサイズだけど、絵柄を眺めていたいから、インテリアにするのもあり。

今や定番となった御朱印帳もさまざまな柄で用意されている。特に、神坂雪佳の図案集を手掛けた、木版手摺による出版社〈芸艸堂〉のグッズは、見事に再現された色合いにも注目。美術館スタッフに聞けば、「御朱印帳は神社仏閣めぐりに携えるだけでなく、トラベルノートにしたり、スクラップブックにしたりと用途はいろいろ」とのこと。どんな使い方にするか、考えるのも楽しい。

中村芳中、神坂雪佳は、琳派の作風に共感し、活躍した作家。琳派は俵屋宗達の「風神雷神図屏風」が代表的で、たらし込みという画法や、装飾性豊かなデザインなどが特徴だ。二代 古香庵・細見實氏が精力的に集めたという。若冲同様、ここでしか買えないオリジナルグッズがたくさんあり、ファンだけでなく日本美術の初心者にもおすすめ。

 

和の香りを纏わせる、かわいいオリジナルクラフト。

左から、香袋990円、布香合2,310円。
左から、香袋990円、布香合2,310円。

京都に来れば、日本ならではの香りにも興味が湧いてくる。〈ARTCUBE SHOP〉には、カジュアルに始められて、見た目もかわいいアイテムが豊富だ。琳派の図柄を施した香袋や布香合は、京都の老舗〈山田松香木店〉とのコラボレーション。香袋にはすでにお香が入っていて、鞄に忍ばせて楽しめる。一方、布香合は好みの香りを入れて持ち歩ける。小物入れとして使うこともできそうだ。

細見コレクション 手刷り小箱(お香入) 各770円。
細見コレクション 手刷り小箱(お香入) 各770円。

ちょっとしたリフレッシュにもぴったりな、小さなお香セットも。京都西陣にあるメーカー〈羅工房〉が作る、味のある手刷りの和紙小箱は色合いも素敵。香りは、ジャスミン、ロータス、レモングラス、サンダルウッド、ローズと、アジアンテイストだ。フレーバーで選ぶもよし、箱のデザインで選ぶもよし。気分で変えるのも良い。

 

ショッピングで、日本のデザインに触れよう。


館内のサインやロゴは、〈資生堂〉の企業文化誌『花椿』のアートディレクションや資生堂パーラーのロゴタイプデザインでも知られるグラフィックデザイナー・故 仲條正義氏が手がけたもの。〈ARTCUBE SHOP〉のショッピングバッグや、館長が欧米の美術館で見て取り入れたというステッカー状の入館証にも施されている。ここは、建築、グラフィック、オリジナルグッズなど、さまざまな要素でデザインに触れられる場所だ。



Text:Kahoko Nishimura
Photo:Natsumi Kakuto



いつもと違う京都府観光には、京都市左京区岡崎の〈ARTCUBE SHOP〉がおすすめ。

ARTCUBE SHOP(アートキューブショップ)


所在地京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
アクセスJR京都駅からバスで約30分
電話番号075-761-5700(代)
URLhttps://www.artcube-kyoto.co.jp/
営業時間10:00〜17:00
休業日月曜(祝日の場合は翌日)、展示替期間、年末年始

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。