新しい本屋の形を模索するために始めたミニマルなお店
京都御所や二条城などの観光地からもほど近い河原町丸太町エリア。近くには鴨川が流れ、自然環境に恵まれた落ち着いた町は散策にも適している。このエリアにオープン当初から注目を浴びる個性派の独立書店〈誠光社〉がある。〈誠光社〉は京都の有名書店「恵文社一乗寺店」で店長を務めた堀部篤史さんが2015年に立ち上げたお店。大通りから一本中に入った路地裏にあり、古民家を改装した小さなお店は木のぬくもりが感じられて、大変居心地が良い。
「あえてアクセスが良いけど目立たない場所を探していて、ちょうど巡り合ったのがここの物件です。目的地として訪れやすいけれど、ある程度の敷居の高さも感じられるような雰囲気のお店を目指しました。僕は京都市左京区で生まれ育ったので、それなりに土地勘のある隣の上京区に店を構えられて良かったと思っています。お隣のカフェ〈アイタルカボン〉の存在も大きかったですね。うちと同じ職住一致で、ミニマルにお店を運営されているなど、価値観が近いお店です。居心地も質も良いお店なので、ぜひ〈アイタルカボン〉にも立ち寄ってほしいです」
出版事業でクリエイターの活躍の場を増やしたい
約18坪の小さな店内には、ワクワク感を刺激する本がぎっしり詰まっている。地域密着型のお店のようにも思えるが、訪れるお客さんは地元の方だけでなく、観光客も多い。全国から、そして海外から、〈誠光社〉の佇まいや雰囲気が気に入り、多くの人が足を運ぶ。
「前職の経験を活かし、ターゲットとなるお客さんに向けて不要なものを切り捨てながら、お店のコンセプトに合うように本の取捨選択をしています 。売れ行きが良いので置き続ける本もあるし、お客さんが好きそうだなと思えばラインナップに加えることも。お客さんとコミュニケーションも取るけど、引っ張られ過ぎないような中間の立ち位置で本を選んでいます。小さなお店ですが、来るたびに内容が変わるので楽しんでいただけるのではないかと思います」
数ある本のなかから、今回旅におすすめの本として選んでいただいたのは、イタリア・リグーリアの食をテーマにした雑誌「LIGURIA: Recipes & Wanderings Along the Italian Riviera」。スペインのインテリアマガジン「apartamento」が発行した食のシリーズ第一弾だ。
僕も旅に行く前は実用的なガイド本ではなく、目的地について書かれたエッセイなどを読みます。有名観光地を目的地にして行くよりも、食文化を知ったうえでお店を選んだほうが能動的で豊かな旅になると思うからです。ただ『おいしかった』だけでなく、背景を知ることで新しい解釈も生まれます。目的は決まってるけど、結果が決まってない旅っておもしろいし、見え方や得られる情報も変わると感じています」
「企画から販売まで一貫して行えるのは単純におもしろいですね。何より自分の周りにいるおもしろいことを考えている人や、まだ世に出てないけど才能がある人に、活躍の場を提供できることに価値を感じています。中間搾取のない僕と相手だけの経済圏が成り立ったら、出版をきっかけにクリエイターの自立にもつながるかもしれません。このサイズ感のお店だからこそ、大手にはできないことを今後もやっていきたいですね」町の小さな書店は驚くほどパワフルで、自然と力がもらえた気がした。〈誠光社〉のこれからの挑戦が書店の未来をより明るくしてくれるに違いない。
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う京都府観光には、京都市上京区の〈誠光社〉がおすすめ。
誠光社
所在地 | 京都府京都市上京区中町通丸太町上ル俵屋町437 |
アクセス | 京阪「神宮丸太町」駅から徒歩約3分、市バス「河原町丸太町」から徒歩約1分 |
URL | https://www.seikosha-books.com/ |
@seikoshabooks | |
営業時間 | 10:00〜20:00 |
休業日 | 無休(年末年始をのぞく) |
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