みんなが集まれる場所をつくりたい。60歳を前にしての独立開業
「このあたりは昔、住宅ばかりでした。最近はおしゃれなカフェなど個性的なお店も増えてきて、“ちょっと賑わい”です」と小西さんが教えてくれた。あたりは静かな住宅街に、老舗のお店や個人商店がぽつりぽつりと点在するひそかなエリアだ。
「大学を卒業して入ったのは、輸入盤レコードを仕入れる会社。でも10年くらいで倒産するんです。それで商品を卸していた会社に拾ってもらいました。地元でチェーン展開していたレコードショップです。お店をひとつ任せてもらい、レコードやCDだけでなく音楽誌や新刊本も扱うようになりました。そこでは20年くらい働かせてもらったと思います。
最初の10年はCDショップ。後の10年はCD&BOOKのお店。でも親会社は別業界の会社だったので、社長交代を機にレコードショップ事業から撤退。次に声をかけてもらったのが、大手チェーン店の本屋さんでした。300坪の新店を立ち上げで、店長をしましたが、新刊書店の現状に疑問を抱きました。そうしているうちに50代後半。いつかは自分の本屋さんもやってみたかったですし、みんなが集まれる場所をつくりたいという思いもありました。まあ、失敗しても少し我慢したら年金が入ってくる。そんな思いにも後押しされてお店を始めることにしたんです」。
スッと入れて、スッと出ていける。敷居ゼロのお店であり続けたい
音楽の世界から本の世界へ。さまざまな経験は、お店づくりにも反映されている。新刊本、古本、従来の出版取次を介さないミニプレス(小数部発行本/自費出版物)、CD、ギャラリースペースで展示・販売しているアート作品など、さまざまな表現者の作品と出会える。特にミニプレスは、全国から「置いてほしい」と依頼が寄せられ、取り扱い数は常時200を超える。基本的には来るもの拒まずで、3か月間は預かっているという。
自分で枠を決めて収めるようなやり方はしない。この考え方は、ミニプレスだけにとどまらない。例えば、以前は数が少なかった海外文学も、常連客の推薦や要望に応えていくうちに充実していった。「自転車で10分くらいのところに同志社大学 があるんですよ。英文科の学生の何人かがよくお店に来てくれて、『この本ない?あの本ない?』なんて話しているうちに増えましたね。ウチの棚は、お客さんが作っていっているんです」と小西さんは言う。新刊本と古本はあえて分けずに、同じ棚に並べているのもユニークだ。「京都の人は本質を見ているというか、気取ったものに抵抗がある気がします。新刊本でも古本でもミニプレスでも、読みたかったら買う。それでいいんだと思います。『どうだ、かっこいいだろ』みたいな、お客さんの先を行き過ぎると嫌がられますから(笑)」。
Text:Atsushi Tanaka
Photo:Shinya Tsukioka
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レティシア書房
所在地 | 京都市中京区高倉通り二条下がる瓦町551 |
アクセス | 京都市営地下鉄 烏丸御池駅から徒歩10分 |
電話番号 | 075-212-1772 |
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