秋分から15日過ぎた頃を「寒露」と言います。草木の露が冷気で霜になりそうな様を表す言葉で、日中も過ごしやすくなります。この時期は、全国的にコキアやコスモスといった秋の草花の見ごろや、十五夜に次いで月が美しい十三夜を迎えます。収穫期を迎える伝統野菜などその土地の味を探す旅もいいでしょう。一方で富士山からは初冠雪の便りが届く頃。旅を通じて秋から冬への移りかわりを実感したいものです。


※観光施設などの営業状況、およびイベントなどの開催状況については、お客様自身で事前にお問い合わせをお願いします。

ひるがの高原(10月頃) イメージ 写真提供:ひるがのピクニックガーデン
ひるがの高原(10月頃) イメージ 写真提供:ひるがのピクニックガーデン

全国 × 花
秋の大地を鮮やかに彩る。


ふと物寂しげな気分に包まれる秋。こんな季節には、コキアやコスモスのような見ごたえのある草花をめぐる旅に出かけて、エネルギーをチャージしませんか。

コキアは、葉がこんもり密生し、丸みを帯びた草姿を特徴としています。爽やかな緑色から次第に赤くなり、やがて茶色、黄金色へと変化するのもコキアならでは。コキアの葉には、「恵まれた生活」「夫婦円満」など、幸せの象徴を表しています。
1万株のコキアが圧巻の光景を作り出す岐阜県郡上市のひるがの高原にある「ひるがのピクニックガーデン」、一面に広がるコキアと雄大な琵琶湖を同時に眺めることができる、滋賀県高島市の箱館山コキアパークが代表的なコキアの名所です。

コスモスは、秋の野原をピンクや白に染める光景がよく知られています。 近年はカラフルなコスモスが登場するようになりました。コスモスの花言葉は、「乙女の真心」「調和」などがあり、清楚な美しさを言い表しているようです。コスモスの名所には、キバナコスモス“レモンブライト”やあかつき、日の丸といったユニークな品種が見られる東京都立川市と昭島市にまたがる国営昭和記念公園、石仏を包み込むように咲く光景が情緒的な奈良県奈良市の般若寺のほか、7色のグラデーションのコスモスで丘一面を彩る大阪府吹田市の万博記念公園、約100万本のコスモスが咲き、大人の背丈ほどのコスモスに包まれそうな大阪府豊能町のとよのコスモスの里が挙げられます。

いずれの場所でも、澄みわたる秋空の下でフォトジェニックな草花を写真に収めることができるでしょう。

※各地見られる花の品種や本数などは変更となる場合があります。


京野菜 イメージ
京野菜 イメージ

京都・奈良 × 食
風土の恵みに感謝する。


秋の深まりとともに農産物は実りの時期を迎え、収穫の秋はそのまま食欲の秋につながります。旅の醍醐味はなんといってもその土地の食材を味わうこと。近年、注目を集めるブランド野菜の味はまた格別です。

京都では、都として栄えた歴史に加え、肥沃な土壌と豊かな水源に恵まれたことで独自の野菜が生まれました。明治時代以前から栽培された「京の伝統野菜」を中心に、京都らしく品質に優れた「ブランド京野菜」が認定されています。この時期は、ブランド京野菜の「紫ずきん」、伝統野菜「すぐき菜」が食べごろ。紫ずきんは、丹波黒大豆を改良したもので、大粒で甘みが強くもっちりしたかみごたえです。すぐき菜はかぶの一種で、上賀茂神社の神官の屋敷内で栽培されていたものが農家に伝わったと考えられています。漬物にすると酸味の効いた風味が特徴です。

奈良県では、大和の伝統野菜と大和のこだわり野菜を「大和野菜」と呼んでいます。大和の伝統野菜は、戦前から奈良県内で生産が確認され、「味、香り、形態、来歴」などに特徴をもつものをいいます。この時期、大和の伝統野菜の「味間いも」や「大和まな」が食べごろ。「味間いも」は粘りが強くコクのある里芋で、煮しめによく用いられます。「大和まな」は大根の葉に似た葉物野菜で、煮びたしをはじめ多彩な食べ方を楽しめます。

京都や奈良でブランド野菜をいただくには、現地の地産地消を掲げるコンセプトレストランを、購入には農産物直売所を利用するといいでしょう。また、「ほんまもん京野菜取扱店」では、ブランド京野菜を積極的に取り扱っています。ぜひ、お店の人におすすめや調理方法をたずねてみましょう。旅の思い出はよりおいしさを演出してくれるはずです。


富士山 イメージ 提供:静岡県観光協会
富士山 イメージ 提供:静岡県観光協会

静岡 × 富士山
富士山から届く冬の便り。


露も冷たく感じるこの時期、冬の気配を感じられるようになります。その始まりのひとつが富士山の初冠雪ではないでしょうか。初めての降雪をいう初雪とは異なり、初冠雪とは山において夏の最高気温が出てから初めて観測された積雪のことをいいます。ふもとから見て積雪で白く見えたときに気象台から初冠雪が発表されます。
初冠雪を迎えて山頂を白く染めた富士山を、お膝元の静岡で温泉につかりながら眺める...そんな贅沢な過ごし方はいかがでしょうか。

おすすめは贅沢な時間が楽しめる富岳群青と松濤館。
伊豆市の「富岳群青」は、全8室全て露天風呂付、100平方メートルのスイートルームを誇る絶景自慢の宿です。ゆったりとつかりながら駿河湾越しに富士山を眺め、休憩時や湯上り後もテラスのチェアから絶景を満喫できるのも魅力です。
沼津市の温泉旅館「松濤館」では、展望大浴場から、内湯でも露天風呂でも淡島の向こうにそびえる富士山を望めます。全客室の過半数が半露天風呂付き。部屋からゆったり富士山の眺望を楽しめます。

どこから見るかで表情が異なり、奥深い美しさで多くの画人や歌人の心をつかんできた富士山。葛飾北斎「富嶽三十六景」や歌川広重「東海道五十三次」でも描かれるように、静岡県内には富士山の絶景ポイントが数多くあります。

静岡市の三保松原は、富士山と松林と青い海の構図が美しい名所。同じく静岡市の薩埵峠(さったとうげ)は、雄大な富士山を望みつつ、麓に東海道本線、国道1号、東名高速道路が重なるダイナミックな景観が人気です。いずれも歌川広重が浮世絵に描きました。その他、ダイヤモンド富士と逆さ富士で知られる富士宮市の田貫湖、昔の国名で十の国が見渡せるほど見晴らしが良い函南町の十国峠もおすすめです。

いつ見ても美しい富士山ですが、山頂を雪で覆われた姿はより美しさを増すものです。


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