誰もが知ってるあのCM。老舗人形メーカーの、もう一つの顔。


「顔がいのちの吉~德~♪」という印象的なメロディのCMを見たことがあるという方は多いのではないでしょうか。五月人形や雛人形で有名な“株式会社吉德”の創業は、なんと正徳元年(1711)。江戸で最古の歴史を誇る老舗人形メーカーです。現在も本店がある江戸浅草茅町(現・東京都台東区浅草橋)に、初代治郎兵衛が開いた人形玩具店が始まり。吉德の元となる「吉野屋」の屋号は、徳川六代将軍 家宣より賜ったそうです。
“人形は顔がいのち”のキャッチコピーが印象的な吉德のポスター。
“人形は顔がいのち”のキャッチコピーが印象的な吉德のポスター。
そんな歴史ある“吉德”ですが、ぬいぐるみメーカーでもあるということをご存じですか?特に1970年代~1990年代に発売されていたぬいぐるみたちは、そのファンシーさとかわいらしい表情に当時かなりの人気だったそう。今見ても色あせない愛らしさです。
こちらは1970年代発売の「座りマリ持クマ」の復刻版。そういえばおばあちゃんの家にこんな感じのぬいぐるみ、あったような…。
こちらは1970年代発売の「座りマリ持クマ」の復刻版。そういえばおばあちゃんの家にこんな感じのぬいぐるみ、あったような…。
昨今のレトロブームの後押しもあり、復刻再販はすぐに完売してしまう商品も多いとのこと。そんな今も昔も変わらぬ人気を誇るぬいぐるみ達の中でも、ひと際人気だったのが1980~90年代に発売されていた「クリーミーうさぎ」。
今回はこの「クリーミーうさぎ」をモデルにしたぬいぐるみを自分の手で作れるという珍しいワークショップが、JR東海の「EX 旅のコンテンツポータル/推し旅」の企画で開催されるとのことで、そのリハーサルにお邪魔しました。

 

初開催!再ブーム中のレトロぬいぐるみが作れるワークショップへ。


会場は吉德の浅草橋本店。JR浅草橋駅の駅構内には吉德のショーケースが…!駅にこんなショーケースでの展示広告があるなんて、珍しいですよね。これも、人形問屋をルーツとする問屋街である浅草橋駅ならではでしょうか。
端午の節句も近い4月某日。ショーケースには五月人形以外にぬいぐるみも並びます。
端午の節句も近い4月某日。ショーケースには五月人形以外にぬいぐるみも並びます。
駅から歩いて1分ほどのところに吉德の浅草橋本店があり、今回はこちらの4階でぬいぐるみ作りを体験します。入店してすぐ目につく迫力大の甲冑を横目に、エレベーターでいざ4階へ。
今日はリハーサルのため、一緒にぬいぐるみ作りを体験するのは吉德の売り場の社員さんや、資料室の学芸員さんなど。講師を担当していただくのは吉德きってのぬいぐるみデザイナーの皆さんです。

実はお裁縫もなかなかする機会がなく、あってもボタン付けくらいで、こんな私でもうまくできるかな…と若干緊張していたのですが、机の真ん中に鎮座するクリーミーうさぎちゃんを一目見た途端、そのあまりの可愛さに、「絶対、かわいい子を作ってあげなきゃ…!」と決意。
まずは材料と道具の説明。綿が入る前のクリーミーうさぎ本体、お洋服、綿、裁ちばさみ、針と糸、目になるボタンパーツ、口を縫う時の目印用型紙、重さだし用のペレットなどです。特に綿のボリュームにはびっくり。こんなたくさんの綿、入るのかな?と思ってしまいましたが、問題なく入るのだそうです。前方のモニターで解説をしていただきながら、いざワークショップ開始!
ぬけがらでもすでにかわいい。
ぬけがらでもすでにかわいい。
さっそく、綿詰めの作業から。手足への綿詰めはなかなか奥までぎゅっと詰めるのが難しく、先生にも手伝っていただきながら進めていきます。通常は綿詰め用の機械でやるようですが、手作業だと案外難しい…。
※ワークショップ当日はあらかじめ手足の綿が入った状態から行います。ある程度綿を詰めたら、今度はお尻に重さだしのペレットを入れます。こうすることで、上手にお座りしてくれるお利口なうさぎちゃんに。
お尻にペレットを入れると、お座りしてくれるように。もうすでにぬいぐるみ感が出てきた…!
お尻にペレットを入れると、お座りしてくれるように。もうすでにぬいぐるみ感が出てきた…!
続いて胴体やお顔の部分にもどんどん綿を詰めていきます。綿の量は柔らかい抱き心地がお好きなら少なめ、ふっくら元気な子が良ければ多め、とお好みで調節。意識するのは縫い目の部分にきっちりと綿を詰めていくこと。これでぬいぐるみの形がはっきりと出てそれらしく仕上がるのだそう。

お顔の部分にも綿を詰めていくのですが、お口の周りの白い部分をめがけ、綿を丸めてぎゅっと詰めていくと、これまたふっくらとしてかわいくなるとのこと。えいやえいやと夢中で詰めていくと、いつの間にかあんなにたくさんあった綿袋の中身が空っぽに。
ふっくら、まあるいお尻がかわいい。
ふっくら、まあるいお尻がかわいい。
と、ここまではまあまあ順調。綿を全て詰めることができたら、次は綿入れ口を閉じていきます。針と糸が苦手な私に走る緊張…。ぬいぐるみの綿入れ口を閉じるときは、表に縫い目が出ないように布どうしをとじ合わせる「コの字縫い」が鉄則。自宅で古いぬいぐるみに綿を詰める…となった時もこの縫い方で応用できますよ。

布の裏にある目印を目がけて針を通したら、縦に垂直になるように数ミリ布をすくってから、反対側の布と縫い合わせていきます。カタカナの“コ”を描くようなイメージです。なかなか初心者にはイメージが付かず先生に手伝っていただきつつも、黙々と進めていき、最後に玉止めをして、糸を隠すように埋め込んで完了!なんとか形になりました…!

人形もぬいぐるみも、顔がいのち。


胴体ができたら、いよいよメインのお顔へ。目に使うボタンパーツは今回2種類から選べます。くりくりのお目目になる大きめサイズと、素朴な可愛さの小さいサイズ。クリーミーうさぎのオリジナルは小さいサイズのお目目だそうですが、ここはお好みで。今回はオリジナルと同じ、小さいサイズのお目目をチョイス。 今回は誰でも可愛く仕上げられるよう、目の位置にちゃんとガイドがありました。安心。目のパーツに糸を通して顎のあたりから糸を引きます。すると…

あっ、

ついに…

いのちが宿りました…!
きゅるんとした目に光がはいっているのを感じます…!いのちが宿った瞬間です。
きゅるんとした目に光がはいっているのを感じます…!いのちが宿った瞬間です。
もう片方の目もバランスを見ながら左右均等になるように。ここは、絶対こだわりたいポイント。作業をする手にも力が入ります。 最後に、顎から通した糸を引っ張って止めるのですが、この糸の引き加減でもお顔が決まってくるそうで、好みのお顔になるまで調整しても大丈夫。 強めに糸を引けば短いお顔に、弱ければ少し長めのお顔に。

迷いつつも、ここで決めた!
ぐっと引っ張って…!決める!
ぐっと引っ張って…!決める!
目が入った途端にお顔らしくなって、そのかわいさに悶絶。このまま口を縫わなくてもかわいいかもしれません。でも、折角なのでお口まで縫うことに。 材料の中に入っていた口の目印用の型紙を利用してピンク色の糸で刺繡をしていきます。真一文字につけても良いし、バッテンのお口にしても良いし、ここは自由に。 型紙の目印があるおかげかそれほど難しくもなく、あっという間にお口の完成。最後の仕上げはお洋服へリボンをつけてあげるのと、お顔にお化粧。リボンもお好みの色から選びましょう。優しい雰囲気にしたいので、ゆめかわな薄いピンク色をチョイス。 ドレスのグリーンにかわいいピンクのリボンが映えます。
 
お化粧はなんと人間用のチークを使って。チークの位置や色の濃さでもだいぶ印象が変わってくるというから慎重に。目の下にぽんぽんと優しくお化粧をしてあげれば、より女の子らしくかわいい雰囲気になりました…!最後にブラッシングでふんわりとさせ、検針をして…

完成…!
完成!私だけのクリーミーうさぎ!
完成!私だけのクリーミーうさぎ!
参加した全員が自分の作ったぬいぐるみのかわいさにメロメロ。お友達のクリーミーうさぎちゃんと並べて写真撮影大会に。 最後にみんなの“うちの子”を一列に並べて…記念撮影!
耳の広がり具合や目の位置、ふっくら具合など、実際に見るとかなり個性があります。
耳の広がり具合や目の位置、ふっくら具合など、実際に見るとかなり個性があります。
子供のお遊戯会に来た親さながらに、シャッターが止まらない!会場が幸せな空気に包まれました。 今回作った子たちは、期間限定でJR浅草橋駅の吉德のショーケースに飾っていただけるとのことで、今からとても楽しみです。

 

10年、20年、30年…ずっとそばに居てくれる、大切なパートナー。


はじめてのマイぬいぐるみ作り。少し苦戦したところもありましたが、愛嬌たっぷり、世界にたったひとつのぬいぐるみを完成させることができました。 振り返れば「カワイイ」しか言っていなかった気がしますが…大人だってかわいいものが大好き。一生懸命愛を込めて作ったこのクリーミーうさぎちゃんは、孫の代まで大事にする!と決めました。
 
今回体験したワークショップ、「クリーミーうさぎをモデルに!あなただけの昭和レトロぬいぐるみ作り@吉德浅草橋本店」はJR東海「EX 旅のコンテンツポータル/推し旅」の企画で【2023年7月22日(土)】に開催!企画では特別に「吉德×JR東海推し旅」のオリジナルカードとドレス型紙付き。会場内のフォトコーナーでは、当時の貴重なレトロぬいぐるみたちの展示もありますよ。 (※現在は終了いたしました。)

世代を超えて愛される、かわいらしい“吉德のぬいぐるみ”。皆さんにもぜひその魅力に一度触れていただきたいです。
 



Text & Photo:tabigatari editorial department




いつもと違う東京都観光には、浅草橋の〈吉德〉がおすすめ。

吉德 浅草橋本店


所在地東京都台東区浅草橋1-9-14
アクセスJR浅草橋駅より徒歩1分
電話番号03-3863-4419
URLhttps://www.yoshitoku.co.jp/
営業時間9:30~17:15
休業日無休

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。