“ビール産業発祥の地・横浜”ならではの新しい試み。


最近、横浜・みなとみらいの道を走る不思議な乗り物をご存じだろうか? 細長いバスのような形で、真ん中にカウンターテーブルがあり、その周りを取り囲むように自転車のサドルのような席が6つ。そのひとつひとつにペダルがついている。
この不思議な乗り物こそ、地元のクラフトビール会社である「株式会社横浜ビール」が、明治時代に日本初のビール醸造所が誕生した“ビール産業発祥の地”である横浜を盛り上げるため企画したという〈横浜ビアバイク〉だ。
元々は自転車大国といわれるオランダ発の乗り物で、搭乗者がビールを“燃料”にペダルを漕いで公道を走るというもの。 バスでも車でもなく軽車両(馬車、人力車、自転車も含む)に分類されるそうで、日本で取り入れたのは、ここ横浜が初めてだという。 横浜が地元である筆者も、時折見かけては気になっていたが、今回はなんとこのビアバイクを体験できることに!

ツアーの始まりは“乾杯!”から。


体験するツアーは、「横浜ミッドナイトハーバービアバイクツーリズム」。 JR関内駅から歩いてすぐの日本大通りで集合後、みなとみらいのロマンティックな夜景を楽しみながらビアバイクに乗車し、最後に横浜ハンマーヘッド内の醸造所見学をするというルートだ。 集合場所でビアバイクが来るのを待っていると、上記と逆のルートを楽しんだお客さんたちがかなり盛り上がった状態で帰ってきていたので、期待もますます膨らむ。
今回は日本大通りの「THE BAYS/&9」前に集合して出発。銀杏並木もライトアップされていて冬の気分が高まる。
今回は日本大通りの「THE BAYS/&9」前に集合して出発。銀杏並木もライトアップされていて冬の気分が高まる。
いよいよ乗車の時間。一緒に同乗するのは、横浜ビールの横内さん、ガイドのトウヤマさん、演奏家のれいとさん。 そして我々の他に、リピーターだというお客さんが2人だ。
出発の前にまずはガソリン注入、ということで配られたのは横浜ビール醸造の黒ビール「ハマクロ」。 プシュッと一斉に缶を開け、乾杯! 見ず知らずの人と一緒に乾杯をするなんていつぶりだろうか。 一口飲むと、鼻にスッと抜ける柑橘系の華やかな香り。パッケージの詳細を見るまで、これが黒ビールだと気づかなかったほど飲みやすく、軽やか。 それでいて黒ビールならではのコクもちゃんとあり、本当に美味しい!ゴクゴク飲んで早々に酔いが回ってしまいそう。運転手である横内さんがチリンとベルを鳴らしたらいよいよ出発の合図。 実はこのビアバイク、全員で力をあわせてペダルを漕がなければ一切動かないという。 そのため誰か一人でも漕ぐのをやめると、他の人のペダルが重くなるという仕様だ。これは責任重大! 生演奏の軽快な音楽とともにスイスイ…と思いきや、スタートから緩い上り坂。早くもメンバーの結束が試される状況に…。
 

いつもよりちょっと高い目線から見渡せば、街も人も違って見える。


12月はイルミネーションシーズンで、横浜の街も美しくライトアップされ見どころ満載。 トウヤマさんに街の名所をユーモアを交えて楽しく紹介していただきながら、力をあわせて進んでいく。 10分もすると普段運動不足の脚は徐々に重くなり、コートも必要ないほどに暑く、息もあがってきた。 普段歩いていて平坦に思っていた道も、意外にも上り坂になっていたり下り坂になっていたりで、思っていたよりも…いや、かなりハードな運動だ。
ただ、酔いが回ってきたせいか、厳しい道になればなるほど不思議とハイテンションになる。 乗り合わせたお客さんの思い出の曲も即興で演奏され、まるでライブ会場のように一体感が高まり盛りあがる。 道行くひとも、ビアバイクが通ると笑顔で手を振ってくれるので、こちらも満面の笑顔で振り返す。 まさか都会の真ん中で街の人々とこんな風に交流できるとは思ってもみなかった。ビアバイク、楽しすぎる!ビバ、ビアバイク!
途中みなとみらいの夜景が綺麗に見える場所で休憩を挟みつつ、進むこと3、40分ほどだろうか。 ついに目的地である「横浜ハンマーヘッド」に到着! 新港ふ頭客船ターミナルを中心に商業施設やホテルが集まる複合型施設で、海のすぐそばにある。すっかり酔いもまわって、風が心地いい。

ビールの楽しみ方が変わる、大人の工場見学。

ここでは醸造所〈NUMBER NINE BREWERY(ナンバー ナイン ブリュワリー)〉を見学する。 レストラン「QUAYS pacific grill」に併設されていて、店内からはガラス越しに醸造設備(仕込み設備)を眺めながら食事をいただけるという。 醸造設備内まで移動し、醸造所の方の解説を聞きながら、オリジナルクラフトビールを試飲させていただいた。今回試飲したのは三種類。濁りのある黄金色で、まるでグレープフルーツのような柑橘の香りがジューシーな「#9 Hazy (ナンバーナインヘイジー)」、ニュージーランドホップならではの華やかな香りが楽しめる「Hammer Head Ale(ハンマーヘッドエール)」。どちらも苦みが少なく、心地よいアロマを感じることができる軽い飲み口で、ビールが苦手という方でも楽しんでもらえそうだ。
そして季節限定の「VERY MERRY XMAS ALE 2022(ベリー メリー クリスマスエール2022)」は、今年は「ジンジャーブレッドクッキー」がテーマだそうで、スパイシーな香りと美しい赤い色がホリデーの気分を盛り上げてくれる。
醸造前の麦芽を味見したり、ホップの香りを嗅がせていただいたりしながら進んでいく解説も、思わずへぇ~と声が出てしまうほど面白く、おかげでこれからビールをもっと楽しく飲めそう。 ビール好きな人にはかなりおすすめできる内容なので、是非実際に体験して、聞いてみてほしい。 見学が終わると、名残惜しいけれどもお別れの時間。

この出会いは、きっと忘れられないものになる。


このビアバイク、同行するガイド、演奏家の方も毎回異なるため、ここで出会うひと達は、まさに一期一会だという。 一緒にペダルを漕いでくれたお客さんも参加は3回目で、体験後に仲良くなったお客さん同士で飲みに行ったこともあるそう。 初めて出会った人同士なのにそこまで仲良くなれるのは、汗を流しながら一緒に飲み交わせるビアバイクだからこそだ。
リモートワークも当たり前になり、対面で会わなくてもある程度はコミュニケーションができてしまう時代。 けれど、その場のノリやグルーヴというものは、人とひとが直接顔をあわせなければ生まれない。その楽しさ、尊さを、今回の体験は思い出させてくれた。
試飲したビールは「横浜ハンマーヘッド」のコンビニエンスストアで購入ができる。旅のお土産にもピッタリだ。
試飲したビールは「横浜ハンマーヘッド」のコンビニエンスストアで購入ができる。旅のお土産にもピッタリだ。
2022年12月23日には、記事で紹介した醸造所〈NUMBER NINE BREWERY〉の見学のほか、 ビアレストランでの食事も楽しめるツアー「X'MASS EXPRESS by横浜ビアバイク」がJR東海の「EX旅のコンテンツポータル/推し旅」の企画で運行する。

(※現在は終了いたしました。)


今年の冬はクリスマスシーズンの横浜で、“会うのが、いちばん。”を感じてみては。
 



Text & Photo:tabigatari editorial department




いつもと違う神奈川県観光には、横浜市の〈横浜ビアバイク〉がおすすめ。

横浜ビアバイク


URLhttp://www.yokohamabeer.com/BEERBIKE.html
 株式会社 横浜ビール
YOKOHAMA Craft Beer Marche

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。