「自分たちが好きな本を読める場所を」という思いで生まれた本屋
小田原城をシンボルに、昔から観光地として知られている神奈川県小田原市。そんな小田原は近年移住者が増えて、“暮らすのに楽しい町”として変化を遂げている。特に小田原城からその先のエリアは新しいお店が続々とオープンし、様変わりしているよう。そのエリアの近くに2022年にオープンした独立書店〈南十字〉に今日は伺った。
〈南十字〉外観。お店の隣には、昔小田原を走っていた路面電車が配置されており、目印になっている。
左から剣持さん、鈴木さん、成川さん。
剣持さん「僕は新しい町に行ったら本屋を覗きたくなるので、そんなお店ができたらいいなという思いがありました。店名の〈南十字〉は、鈴木さんのアイデア。もともとこの辺りが“南町”だったから名づけたのですが、大家さんからあとで『昔、この辺は十字町と呼ばれていた』と聞いて運命を感じましたね」社会人となって小田原を出た鈴木さんと剣持さん、そしてずっと地元に残っている成川さん。それぞれの視点は違えど、小田原はここ数年で街の様子が大きく変化したと口を揃える。
成川さん「コロナ禍を経て、東京からの移住者が増えましたし、新しいお店ができて町の雰囲気が変わりました。人の流れも活発になって、風通しがよくなったと感じます。その変化があったからこそ、この町で本屋を始めてみたいと思いました」
誰かの南十字となるような本屋を目指して
〈南十字〉では3人それぞれの役割が決まっていて、選書は本や音楽などカルチャーに詳しい成川さんが行っている。書籍や絵本、雑誌、ZINEなどさまざまな種類の本があって、ここならお気に入りの一冊に出会えるような期待感が膨らむラインナップだ。絶版本を店内で自由に読める小さなカフェスペースもあり、訪れた人は思い思いの時間が過ごせるようになっている。
成川さん「2人からのリクエストも加味しつつ、自分たちが読みたい本を揃えています。知らない本でも思わず手に取ってみたくなるような、そんなラインナップを目指しています」
成川さん「短編がいくつか入っている本なので、電車で1駅移動する5分の間に一編読むという楽しみ方ができます。このサイズ感やポケット辞書のような装丁も好きです。僕も旅行先に本を持っていくときは、旅にまつわる本というより、普段読んでいる本が旅先でどう印象が変わるか、そんな視点で選んでいます」
剣持さん「最初は本屋さんと思われていなかったのか、来店しても何も買わずに出ていく人も多かったです。でも最近は〈南十字〉を目的地にして来てくれる人が増えました。本はひとりで向き合うものでもあるので、誰でも入りやすい空間は必要だと思っています。〈南十字〉もそういう場所でありたいですね」
鈴木さん「南十字はその昔、航海の目印となっていた星座。ここ〈南十字〉も人々にとってそんな場所になってほしいです。そのためにも誰にとっても居心地の良い空間を作っていきたいと思います。そして無数にある星の中から星座を見つけるように、自分だけの一冊に出会ってもらえたら嬉しいですね」
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う神奈川県観光には、小田原市の〈南十字〉がおすすめ。
南十字
所在地 | 神奈川県小田原市南町2丁目1-58 |
アクセス | JR小田原駅から徒歩約15分 |
URL | https://minamijujibooks.com/ |
@minamijujibooks | |
営業時間・休業日 | Instagramストーリーズにて更新 |
※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。