素揚げにこだわった創業66年のから揚げ屋さん


三嶋大社から鎌倉古道を歩いて行くと、こじんまりとした素敵なお店たちが並んでいます。つい足を向けたくなる魅力的な路地もいくつかありますが、その1本に入ってすぐ。三島広小路駅からも歩いて5分ほどのところにそのお店はありました。
「から揚げ 若鳥」。見るからに雰囲気のある紺の暖簾と緑の看板。それもそのはずで、こちらは創業1960年の老舗。“素揚げ”にこだわり、2023年には日本一のから揚げを決める「からあげグランプリ」の最高金賞を受賞。常連さんはもちろん、噂を聞きつけて遠方からやってくるお客さんも。テイクアウトも大変人気だそうですが、やはり揚げたてを食べたい!と暖簾をくぐりました。

シンプルな調理法で追求する究極の味

2代目の店主・土屋禎大さんにお話を伺うと、1日に揚げるから揚げはモモと手羽それぞれ40本ずつの80本。かつては薄く片栗粉を引いた衣付きを出していたそうですが、現在はシンプルに塩のみの素揚げです。最近、切り方を改良したそうで、土屋さんがたまたまテレビを見ていたところ、気になったお店があったのでさっそく足を運び研究。すると若鳥のから揚げとは違うところに1本切れ目が入っていることに気づき、取り入れてみることに。
元々ジューシーさを求めて極力揚げ過ぎないギリギリのところを攻めるスタイルだそうですが、その方法を取り入れることで揚げ時間も短縮したと言います。
しっかりとした塩気でビールが進みます!
しっかりとした塩気でビールが進みます!
この日は、ちょうど油をつぎ足した日で「特別うまいっすよ」と土屋さん。先代から引き継いでいるという油で、さっそく揚げ始めてくれました。
徐々にボリュームが上がってくる揚げている音、そして漂ってくる香り。もう我慢なりません…!
完成!左が手羽、右がモモの素揚げ
完成!左が手羽、右がモモの素揚げ
基本メニューはモモと手羽。手羽の方には胸肉、ささみ、手羽元、手羽先が全部1個に詰まっているといいます。もちろんどちらも注文!揚げたてはとっても熱くて口の中を火傷しそうなのですが、その状態でかぶりつくのがとにかく美味しいんです。皮はパリパリ、そして身はジュワ〜。なんだか当たり前の表現になってしまうのが残念なのですが、普通のから揚げとは全く違うのが一口目から分かります。鹿児島から仕入れているという鶏肉そのものも美味しい。塩味がしっかり効いているので当然お供はビール、またはハイボール。いやレモンサワーもいいですね。とにかく最高です。
2代目土屋禎大さんは最近ゴルフに夢中
2代目土屋禎大さんは最近ゴルフに夢中

守るだけでなく挑戦し続ける老舗の味


お店を始めたのは土屋さんの祖母。「ばあちゃんが71歳の時に突然、80歳になったら辞めると宣言したんです」。当時まだ20歳だった土屋さんはお父さんを早くに亡くしていたため、自分が継がなくては店がなくなってしまうと、すぐに仕事を辞めて一緒に働き出したそうです。まずはホールや仕込みの手伝いから。自分が独り立ちした時にはすでにお客さんに顔を覚えてもらえているように、早めに動いたんだと言います。
宣言通り80歳で引退したおばあさんから引き継いだのは2020年。継いで早々にコロナ禍で大変だったはずですが、そんな中で土屋さんは自ら地元テレビ局に「三島のから揚げ屋さん特集」の企画を提案。それをきっかけに様々なメディアでも取り上げられるようになり、乗り越えることができたそうです。
「結構世の中って言ってみるもんだな、というか言わなきゃいけない時、やらなきゃいけない時ってあるんですよね」と土屋さん。お店の壁には日本地図が貼られていて、静岡県外からきたお客さんの都道府県の色を塗りつぶしているそうです。始めて1年少しで残るは大分県のあと1県(2025年5月現在)!
いやー思い出すだけで、食べたくなってきました。またかぶりつきに行きます!



Text & Photo:tabigatari editorial department




いつもと違う静岡県観光には、三島市本町の〈から揚げ 若鳥〉がおすすめ。

から揚げ 若鳥


所在地静岡県三島市本町4-1(Google Map
アクセス伊豆箱根鉄道三島広小路駅から徒歩約5分
電話番号055-975-3261
Instagram@wakadori.shizuoka.1960
営業時間17:00〜22:00(から揚げが無くなり次第終了) 
休業日火曜日、第3月曜日

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。