永遠に続いてほしい旅の時間。
フランスのジャズピアニスト、エドゥアール・フェルレが奏でるバッハの世界に初めて出会ったのは、パリの小さなレコード店でした。
『Think Bach』というタイトルに惹かれて手に取ったアルバムは、生来バッハ好きの私にとって旅には欠かせないものとなりました。
このアルバムの魅力は、1曲目から最後まで順番に聴くことで初めて完成される、ひとつの大きな物語にあります。
バッハの楽曲をベースにしながらも、フェルレ独自の解釈とジャズの感性が織り交ぜられた音楽は、まるで知らない街を歩きながら、少しずつその土地の息づかいを感じ取ってゆくような体験です。
長い列車の旅でこのアルバムを聴いていると、窓の外に流れる風景と音楽が溶け合い、時間が止まったような感覚に陥ります。
永遠にこの旅が続いてほしい、そんな気持ちになるのです。
目的地に着くのが惜しくなって、もう一駅先まで、と電車に揺られ続けたくなる。
そんな魔法のような時間を、このアルバムは私に与えてくれるのです。
1. Analecta | Edouard Ferlet |
2. Dictame | Edouard Ferlet |
3. A la suite de Jean | Edouard Ferlet |
4. Verso | Edouard Ferlet |
5. Lisière | Edouard Ferlet |
6. Souffle magnétique | Edouard Ferlet |
7. Que ma tristesse demeure | Edouard Ferlet |
8. Lapsus | Edouard Ferlet |
9. Diagonale | Edouard Ferlet |
10. Réplique | Edouard Ferlet |
11. Agnus Dei | Edouard Ferlet |
12. Air on the G String | Edouard Ferlet |
13. Erbame dich mein Gott | Edouard Ferlet |
Text:Ai Hosokawa
Cover art:Yoshiyuki Okada
細川亜衣(ほそかわあい)
料理家。taishojiディレクター。毎月の料理教室や料理会、工芸の作家の展示会を主宰。国内外でさまざまな活動を行っている。
Instagram:@hosokawaai