書店の跡地にできた、立ち飲みもできる本屋さん
全国的に大型書店が減るなか、近年数が増加し、存在感が増してきている独立書店。静岡県東部に位置する三島市も、そんな独立書店が増えているエリアのひとつだ。今回訪ねたのは、2023年9月にオープンしたばかりの〈ヨットブックス〉。お店は伊豆箱根鉄道、通称「いずっぱこ鉄道」の三島田町駅から徒歩すぐ、三島駅からも徒歩でアクセスできる場所にある。
「一度、長野県松本市にあるゲストハウスで住み込みで働いた経験があり、そこで個人店のおもしろさを知りました。この物件に出会ったのは、2階にあるアパレルブランド〈SLEEPYY〉の店主さんにご紹介いただいたのがきっかけです。学生時代に三島の高校へ通っていたため馴染みもあり、この場所でお店をオープンすることに決めました」
〈ヨットブックス〉店主の菅沼祥平さん。
「昔は落ち着いた町というイメージでしたが、ここ5年くらいで新しい個人店が増えて、三島独自の雰囲気が作り上げられているように感じます。市内には美しい川が流れ、緑豊かな公園も点在しており、程よく自然を感じられる点も好きな部分。コンパクトな町なので、散策もしやすく、観光地として盛り上がるポテンシャルを秘めた地域だと思います」店内は大きな窓から心地良く光が入る開放的な空間。大きな本棚のある広々とした空間にはカウンターがあり、お酒やコーヒーなどのドリンクの提供も行っている。
さまざまな目的で訪れた人々と自然と交流が生まれる空間
資金を抑えるため、内装の一部は自分で手がけたという。
「本の文化を伝えたくて始めた本屋さんなので、選書にこだわっています。たとえば料理というジャンルでもレシピ本ではなく、エッセイや伝統的な料理を紹介する書籍など、考え方が感じられるような本を積極的に取り扱っています。かつて本に関わる仕事をしていたので、小さな出版社や個人の方々を応援したいという気持ちもありますね」
「ウルトラライトハイキングとは必要最低限の道具だけを持ち、ロングトレイルを歩くハイキングスタイル。そんなウルトラライトハイキングの魅力に迫る解説書です。“荷物を少なくする”、“軽くする”という考えは、実用的な面だけでなく、その考え方自体が旅や普段の生活に活きてくると感じます。旅だったら、荷物を減らして空いたスペースにお土産を入れて持ち帰れますよね。僕も普段の服装を決めるとき、そんな視点で服を選ぶことがあるんです。日々の生活を見直すちょっとしたきっかけになるような本だと思います」〈ヨットブックス〉自体も、訪れる人や町にちょっとした良い刺激を与えるような存在になりたいと願う。月1を目安にギャラリーを開催したり、市内のお店を集めてイベントを行ったりなど精力的に活動している。
「ギャラリーを始めたのは、もともと興味があったのももちろんですけど、誰でも入りやすいお店にしたかったからです。ドリンクの提供を行っているのも同じ理由で、コーヒーを飲むだけとか、展示品を見るだけとか、好きに利用していただいて構わないと思っています。さまざまな目的を持った人がふらっと立ち寄れる空間でありたいですね。その過程で本に出会っていただけたら嬉しいなと思います」
「今後もさまざまなイベントを実施していきたいと思います。今は前に店内で行った『三島人(zine)展』の規模を大きくして、ライブハウスで行う予定です。僕も音楽が好きで、人とのつながりができたので、その輪をもっと広げていきたいですね」
昨年8月に三島市の白滝公園で行われたイベント『本と水辺』も、菅沼さんが中心となり企画したもの。〈ヨットブックス〉をきっかけに三島の町はさらに魅力が増していきそうだ。
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う静岡県観光には、三島市の〈ヨットブックス〉がおすすめ。
ヨットブックス
所在地 | 静岡県三島市北田町4-21 1F |
アクセス | JR「三島駅」から徒歩約15分、伊豆箱根鉄道「三島田町駅」から徒歩約1分 |
@yacht_books | |
休業日 | 水曜、木曜 |
※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。