7坪の空間にマニアックな本が集まる個性的な書店
愛知県のほぼ中央、名古屋市からは約30kmの位置にある安城市。農業で発展してきた地域であり、かつては農業先進国のデンマークになぞらえて「日本デンマーク」とも呼ばれていた街だ。都市開発が進んだ今でも農業は盛んで、自然を身近に感じられる環境の良さが魅力。今回は、そんな穏やかな街にある独立書店〈七坪書店〉を訪ねる。
一般の民家かと思いきや、じつは本屋さん。
「もともと本は好きだったのですが、自分で本屋を開きたいとまでは思っていませんでした。この家をなんとか活用したいという思いで始めたんです。このあたりは三河安城駅の前にチェーンの本屋が1軒あるだけだったので、個性的な独立書店がハマるのではないかとも考えました」
店主の松崎通彦さん。
「安城は“ほどほど”というキーワードがぴったりの街です。そこまで田舎でもなく、住むのに必要なものはだいたい揃うので、子育てしやすい場所だと思います。名古屋や空港へアクセスしやすい交通の便の良さも魅力でしょう。ただ、過ごすにはちょうど良い一方で娯楽が少ないので、一般書店にはあまりないようなマニアックな本を扱って立ち寄りたくなる本屋を目指しました」
店舗スペースが約7坪だったことから、店名はシンプルに「七坪書店」。
内装も選書もイベントも。どんどん進化する〈七坪書店〉
〈七坪書店〉には松崎さんの“好き”がたっぷり詰まっている。店内には趣味で描いた絵が飾られ、本棚やカウンターはDIYが得意な松崎さんご自身が作ったもの。コーヒーが好きだったことから書店にカフェの機能を持たせ、カウンターでドリンクの提供も行っている。
「オープン当初からカフェのメニューやレイアウト、本の種類もかなり変わったと思います。今でも週1くらいで内装などに手を加えているので、訪れるたびに変化が感じられる本屋になっていると思います。本も今は400冊くらいですが、もっともっと増やしていきたいですね」
昔、ヘミングウェイの『移動祝祭日』を読んで、本の題材となったパリにそのまま2週間ほど滞在したことがあります。パリの生活を疑似体験する旅が楽しくて、散歩した先でたどり着いた公園がきれいだったことなど、些細な出来事が記憶に残っています。自分の予想しないモノに出会える行き当たりばったりの旅はすごくおすすめです」
お話を聞いていると、奥泉光さんの本格SFエンタメ「ビビビ・ビ・バップ」や、横浜駅が日本を浸食するという奇想天外な設定の「横浜駅SF」など、興味をそそる本が松崎さんの口からどんどん飛び出してくる。〈七坪書店〉には、そんなマニアックでおもしろい本があふれているのだ。
今後も進化し続けていく予定だという〈七坪書店〉。訪れれば、きっとおもしろい本や体験に出会えるはず。
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う愛知県観光には、安城市の〈七坪書店〉がおすすめ。
七坪書店
所在地 | 愛知県安城市桜井町西町上54番地 |
アクセス | 名鉄西尾線「桜井駅」から徒歩約10分 |
URL | https://nanatsubobooks.com |
@nanatsubobooks | |
営業時間 | 11:00〜19:00 |
休業日 | 水曜、木曜 |
※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。