旅の記憶に最も結びつくのは音なのかもしれない。
僕が初めて海外に向けて日本を飛び出したのは13歳の夏。
オーストリアのウィーン、ザルツブルグという音楽の都と云われる当時の僕にとって夢の街。ヨーロッパの音楽を仕事にしている僕は、今日に至るまで本当に沢山のヨーロッパの国を巡る旅を続けてきている。
旅が好きか、と改めて自分に尋ねてみたらあながちそうではないことに気付かされた。
方々に出掛けていって名所と呼ばれる土地や建物を巡ったり、飛行機や列車に乗って長い距離を移動することは嫌いではないし、むしろ愉しんでいる自分がいる。でも、僕にとって旅とは、ふとした時に五感が働いて記憶と結びついた瞬間に、愉しさや充実した時間として確認できるものだ。
肌で感じるそれぞれの旅先の風や、小さな街角に差し掛かった時に何気なく感じた匂いが僕の旅を彩る。その中でも最も旅の記憶に結びつくのは音なのかもしれない。ヨーロッパの国々には、愛国心に強く紐付いた楽曲が数多くある。
今回はその中でも、僕の旅の記憶やその時に感じたこと、思ったことを強く再生、再構築する為の刺激を与えてくれて、心の奥深くを揺さぶってくれる作品を選んだ。
ずっと地平線の向こうまで続く線路に沿って歩きながら口ずさむユモレスク、未知の土地に感じた畏怖の念と大きな期待に心が弾けそうになった新世界アメリカと懐かしい故郷を想うノスタルジー、切ないほどの自国に対する愛と不屈の精神に溢れたモルダウ、手を伸ばせば届くのではないかと思えるほどに熱く輝くイタリアの太陽オーソレミオ、今は不幸な悲しい時間を迎えているがとても美しい街キエフの大門、僕が7年間過ごしたハンガリーの悲しい歴史とそこに集った様々な民族が絡み合った切なく情熱的な感情が生んだハンガリー狂詩曲など。
これらの作品は単なる曲ではない。
そう、僕の旅の記憶を立体的に再生してくれ、生きてきた時間を大切に絵画として描いてくれる景色そのものなのだ。
1. ユモレスク | アントニン・ドヴォルザーグ作曲 |
2. 交響曲第9番「新世界より」 - 第4楽章 | アントニン・ドヴォルザーグ作曲 |
3. 交響詩「我が祖国」より「モルダウ」 | ベドルジハ・スメタナ作曲 |
4. ハンガリー狂詩曲 第13番 | フランツ・リスト作曲/タカヒロ・ホシノ編曲 |
5. 悲しみのゴンドラI | フランツ・リスト作曲 |
6. カンツォーネ オー・ソレ・ミオ | イタリア民謡 |
7. 展覧会の絵より キエフの大門 | モデスト・ムソルグスキー |
Text:Takahiro Hoshino
Cover art:Yoshiyuki Okada
タカヒロ・ホシノ(干野 宜大)
ピアニスト/T&K Classics,PRICE ATTRACTIONS,USA専属アーティスト
上野学園短期大学音楽学部客員教授,昭和音楽大学講師
FIERTÉ及びFIERTÉ Piano Academy代表
Euro Arts Academy/Talent Music Summer Courses教授
国際ピアノ協会会員
The European Academy of Music教授
公式ホームページ:https://fierte115.wixsite.com/takahirohoshino
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