仕事の合間に見つけた小さな宇宙旅行。

夜中まで仕事をする日は晩御飯を事務所の近所で調達する。その日はスーパーの鉄火丼にしようと思いながら行くとまさかの定休日。スーパーは年中無休だと思っていた貧弱な現代人である自分にがっかりしながら他を探していると、普段見かけない看板を見つけた。

吸い込まれるようにビルの3階まであがると、店主がニコニコとこちらをのぞいている。愛想のいい人だなと思ったら、いつも餌を食べにくる猫が来たと思ったらしい。店内は自作の服や小物が並んでいて、気になるものがいっぱいある。ヘンテコな宇宙みたいだった。

BGMは、音楽というよりは、何かの録音のようなジャズのような、不思議な曲が流れていた。あれこれ話をしているうちに、いつもの猫が窓からやってきた。かなり険しい顔つきの、都会に生きるたくましい猫だ。

帰り際、あのBGMなんの曲だったんだろ、と思いながら仕事に戻った。次いつ看板が出るかわからないけど、その扉が開くのを待ってみる。事務所から徒歩3分の、宇宙に続く階段。仕事の合間の小さな旅だった。

音楽は記憶と連動している。ポケットに空気を詰め込んで、あとは気の向くままに出かけたい。そんな気分にさせてくれるプレイリストになりました。

“今日は休みだ 何しよう”
“なんかオモロイものとかあるかも”
 

Text：Peko Asano
Cover art：Yoshiyuki Okada

朝野ペコ（あさのぺこ）

日本のイラストレーター。
書籍や広告のイラストレーションを手がける。シンプルな線画が特徴。主な仕事に、2024年度東京メトロマナーポスター、映画「花束みたいな恋をした」劇中イラストなどがある。
Instagram：@asanopeko
WEB SITE：asanopeko.com