泊まれる出版社から町の魅力を発信
タビガタリ編集部が取材で何度も訪れている真鶴町。神奈川県の南西部に位置する港町で、町の美しさを守るために定められた条例「美の基準」により、その古き良き景観は守られ続けている。そんな真鶴は近年、移住する人が増えているという。編集部が取材をするなかでも、県外から真鶴に移住してきた人の話を聞くことが大変多い。その中心となっているのが〈真鶴出版〉である。真鶴で取材をするたびに名前があがる〈真鶴出版〉の川口瞬さんは、一体どんな方なのだろう?実際に訪ねてお話を伺ってきた。
帰国した翌日には、お二人で真鶴を訪れたという川口さん。その日は雨が降っていて、かつ日曜日で主要なお店は閉まっていたが、凛とした静けさと落ち着いた町の様子に心惹かれた。移住の決め手となったのは、真鶴町お試し移住体験事業「くらしかる真鶴」の紹介があったからだ。
「市役所の方から、町の施設『くらしかる真鶴』を活用した移住体験を始めるというお話を聞き、その第1号として2週間お試し暮らしをすることになりました。町の美しさはもちろんのこと、暮らす人々も温かく、違和感なく町に溶け込めそうと感じ、移住を決意しました。会う人会う人と気が合うなと思ったのも大きかったです」
わずか2週間でも、真鶴の良さを実感できた川口さんご夫妻。お試し暮らしをしている最中に物件を決め、晴れて2015年4月から真鶴での生活が始まった。
〈真鶴出版〉の街歩きツアーをきっかけに移住者が増加
大学時代、東京の出版社兼書店でインターンを経験し、社会人になってからは働きながらインディペンデントマガジンの製作を行っていた川口さんは「いつかは自分で出版業をやりたい」という夢を持っていた。一方、奥様の來住さんは、青年海外協力隊の日本語教師としてタイで活動した経験から、外国人向けの宿泊施設を立ち上げたいと考えていたそう。
「街歩きツアーを始めたのは、たとえばお肉屋の店主と世間話をする楽しさなどを観光客にも味わってもらいたかったからです。当初は近辺の案内だけだったんですが、真鶴の良さをもっと伝えたいという気持ちからどんどん距離が長くなって、今は約1.5〜2時間ほどかけて真鶴の町を紹介しています」
こうした取り組みや川口さんご夫妻との出会いをきっかけに、真鶴に魅力を感じ、移住してくる人が増えている。その数、なんと60人。なかには真鶴に来て新しいお店を始める人もいて、ここ2~3年で新規のお店は増加した。昔ながらのお店と、新しいお店が融合し、真鶴はまた一層魅力あふれる町へと変化しつつある。
住む人々が受け継ぎ、守っていく真鶴の文化
川口さん曰く、真鶴に移り住む人はどこか波長が似ているそう。なかには、作家やアーティストなど職人気質の方も多い。移住者は真鶴のどんなところに心惹かれるのだろう。
「真鶴は観光地とは違って派手さはないし、人も少ないけれど、景観の良さから生まれる文化的な香りがするのが魅力だと思います。その空気感が人の心を掴むのかもしれないですね。移住してくる方も町の良さを理解し、守ろうとする方ばかりです」
町の価値観が人々に浸透しているからこそ、移住してくる方は今の真鶴を大切にし、その気質のなかで生きようと思うのかもしれない。それを一番に体現しているのが、川口さんだろう。真鶴が守ってきた景観はいつしか文化として根付き、町に住む人々の共通認識として脈々と引き継がれている。
今後〈真鶴出版〉は、さまざまな地域と事業に取り組んでいきたいという。その魅力は真鶴を超えて、さらに広がっていきそうだ。
Text & Photo:tabigatari editorial department
いつもと違う神奈川県観光には、〈真鶴出版〉がおすすめ。
真鶴出版
所在地 | 神奈川県足柄下郡真鶴町岩217 |
アクセス | JR真鶴駅から徒歩約7分 |
お問い合わせ先 | info@manapub.com |
URL | https://manapub.com/ |
@manazurupublishing | |
営業日時 | 金曜、土曜の13:00〜17:00(宿泊可能日は金曜~火曜) ※不定休のため、営業日はInstagramをご確認ください。 |
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