熱海で過ごすゆっくりとした時間は、本を読んでいる感覚に近かった。
このプレイリストは熱海への読書旅を想像しながら作ったものだ。
最近、本を読む機会がめっきり減ってしまった。
一時期は、アルバイトで仕事をするふりしてこっそり本を読むくらい、隙あらば本を読んでいた時期もあるが、今では気づけばスマホばかりいじってしまう。
デジタル世界の「早い時間」の流れに絡め取られ、現実空間でもまるで何かに追われているような切迫感を受ける。
同じように感じている人は多いのではないだろうか。
本来、読書はこういった切迫した「早い時間」から抜け出すための脱出口のようなモノであるはずだ。しかし、現代は濁流のように押し寄せてくる情報が、脱出口に掴まることすらさせない。
東京にいると尚更そう感じる。
昨年熱海に行った。そこでは、ゆっくりとした時間を感じることができた。そこで過ごすことは、本を読んでいる感覚に近かった。
熱海は名だたる文豪にゆかりがある地だ。そんな熱海は読書にピッタリな場所なのではないだろうか。
このプレイリストでは、読書と熱海の街に合うような曲をセレクトした。歌がなく、本のテクストの伴奏になるようなピアノ曲たち。楽曲のタイトルにも注目いただけるといいかもしれない。
本は、自分の知らない「物語」に出会う機会を与えてくれる。旅もそうだ。
私たちは「物語」を通してしか世界を知り得ない。
アルゴリズムによってパーソナライズされたインターネット世界で、“本当の意味”で知らない「物語」に巡り合うことは難しい。
スワイプではなく、ページをめくって「物語」との出会いへ。
さあ、旅に出よう。
1. kokyu | 延近輝之 |
2. 四月のある晴れた朝に | ArkaToni |
3. touten No.4 | 江﨑文武 |
4. Page | 橋本秀幸 |
5. 190306-11 | 橋本秀幸 |
6. Iki | 橋本秀幸 |
7. 陰翳礼讃 | 江﨑文武 |
8. 栞日 | いろのみ |
Text:ArkaToni
Cover art:Yoshiyuki Okada
ArkaToni(アルカトニ)
ArkaToniは1993年生まれ、神戸市出身の空間音楽家、デザイナー、アートディレクターである。空間と時間を製作するという観点から、アンビエント/ニューエイジなどの作曲をする一方、内装デザインや、キャンドル、グラフィックのデザインなどを手がける。
Instagram:@arkatoni
X(旧Twitter):@ArkaToni2