知らず知らずのうちに、音楽が寄り添ってくれていた。
私の母はピアノを教えていて、お腹の中にいた頃から母のピアノの音に慣れ親しんでいた。もちろん母の手ほどきで幼少期からピアノを習い始めたが、自身が弾くとなると何とも彼とも、、母が先生であることも負に作用して、どんどん嫌いになってしまった。人生初めての挫折感を味わったのはピアノを辞めると決めた日だったかもしれない。それからというもの、音楽にトラウマを感じながら、好きな音楽を公言することさえ控えるようになった。
18歳の頃にはじめてタイのチェンマイを兄と旅をし、布の手仕事の世界に出会う。大学卒業後、導かれるようにチェンマイに移住し、旅行会社を立ち上げ、ゲストハウスを経営した経験も。そして好きな手仕事をずっと続けながらOMというブランドを立ち上げた。
挫折を味わったあの日から今までの数十年、知らず知らずのうちにスッとそばに寄り添ってくれていた音楽。そこにあったのは友人や家族を想い出す音楽。
今は旅先というより生活の拠点になってしまったチェンマイだが、音楽を聴くと若き日の記憶が鮮やかに蘇ってくる。製作スイッチをオンにしたい時にも必須なものとなった。
過去の記憶を手繰り寄せながら人生という旅と音を愉しんでいる。
1. Thailand | 王舟 |
2. Both Sides Now | Emilia Jones |
3. 逢えない季節 | yonawo |
4. Sandy Babe | Mapache |
5. Pra Te Dizer Que Tô Feliz Assim | Silva |
6. Two Kites | STUTS, Noi Naa, YONLAPA |
7. Why Why Why | YONLAPA |
8. BunBun | CHERU |
9. 冬に生まれた子牛 | Khruangbin |
10. Homesick in Calcutta | U-zhaan, Cornelius |
11. Chiangmai | Yun Seokcheol, Sejin |
Text:Azusa Kawaguchi
Cover art:Yoshiyuki Okada
川口梓(かわぐちあずさ)
OM sabai sabai ディレクター、1980年東京都出身。多摩美術大学生産学科テキスタイル専攻卒。長崎、チェンマイ、東京を行き来しながら、自身のブランドの企画、製作、販売を展開。自然と息をするように、流れに身を任せながら、日常と仕事の境界線なく過ごしていくことが理想。
Instagram:@omsabaisabai