良質なセレクトが街の人にも信頼され、大人と子どもが集う場所。


富士山に連なる愛鷹山麓の中腹にある、静岡県長泉町。三島駅からシャトルバスで25分、ゆっくりと移動するうちに緑豊かな「クレマチスの丘」という複合施設に到着する。ここは、花、アート、食がコンセプトの広大な敷地。その中にある「ベルナール・ビュフェ美術館」の前にも、開館の年に植えられたクスノキがそびえたっている。2023年で50周年を迎えるというから、美術館を取り囲む自然の景色も変わってきたかもしれない。

そのシンボルツリーに見守られるようにして建っているのが、カフェ&ショップ「TREEHOUSE」。2013年にリニューアルして、現在の姿になったという。長泉町は県内でも出生率が高い、子育て世代に人気の町。このショップは、子どもたちに向けたアイテムも多くそろえている。地域に根ざしたミュージアムショップというのは、珍しいかもしれない。

白い壁とガラス窓が印象的な外観と打って変わり、店内は木の温かみが感じられるデザイン。中には、フランス画家のベルナール・ビュフェに関する書籍やグッズに加え、地元作家の作品や国内外の良質なおもちゃが並んでいる。やはり、地域の親子連れに重宝されているという。

 

子どもたちに贈りたい、優しいアイテム。


ドイツの老舗「ケーセン社」のぬいぐるみや、国内外の名作絵本など、子育て世代にうれしいものがそろう中、静岡にゆかりのあるアーティストの作品にも注目したい。子どもたちへの想いを込めて制作しているという木の造形作家・杉山明博さんは静岡出身。ベルナール・ビュフェ美術館内の〈ビュフェこども美術館〉にも作品が展示されている。オブジェにもおもちゃにもなりそうなアイテムはさまざまなシリーズをラインナップ。なかでもフクロウは一つ一つの個性が違い、選ぶのが楽しい。顔の部分はパズルのようにはめ込まれていて、回転させると表情が変わって見える。
左から、フクロウ(小)6,480円、フクロウ足付き8,800円。
左から、フクロウ(小)6,480円、フクロウ足付き8,800円。

杉山さんの作品は、同じTREEHOUSE内のカフェにも展示されている。子どもたちが自由に触れられるから、感性を豊かにできそうだ。

美術館での企画展も開催した長泉町在住のアーティスト長谷川ジェットさん、画家・絵本作家いせひでこさんなど、ゆかりのある作家の絵本も数多い。商品は美術館のスタッフがセレクト。子どもたちへのプレゼントには、間違いないものが選べるだろう。

店の窓際には、子どもたちとゆっくり絵本を選べるような席も。落ち着いてショッピングできる雰囲気もあたたかい。旅の荷物を持っていても気にならない、余裕のある空間だ。

 

アーティスト、デザイナーのオリジナルグッズがかっこいい。


大人向けのアイテムを探すなら、ぜひオリジナルグッズに目を向けて。デザイナーやクリエイターが携わり、洗練されたものが豊富。普段の生活にも馴染むモノトーンのTシャツやトートバッグは、ベルナール・ビュフェの作品がデザインされている。これは、会場デザインや作品集などアートシーンで活躍するデザイナー・山本誠さんがプロダクトにしたもの。Tシャツにプリントされているのは、ジャン・コクトーの戯曲「声」を版画で表現したビュフェの作品だ。1957年の制作だが、古びない魅力で若い世代にも好評だという。

Tシャツ3,000円、トートバッグ(S)1,200円。
Tシャツ3,000円、トートバッグ(S)1,200円。

ベルナール・ビュフェの作品は、「声」にも表れているように直線が印象的に使われている。美術館の外壁にもある、版画や油絵の中に書くサインもデザインとして美しい。美術館は、大阪万博のエキスポタワー、江戸東京博物館など数々の有名建築で知られる菊竹清訓さんによる設計で、中央の吹き抜け空間では大型作品をゆっくりと鑑賞できるようになっている。2,000点を超えるコレクションから、入れ替わり常時100点以上が楽しめるそうだ。

ショップのオリジナルアイテムも素敵。ロゴを担当したデザインユニット・KIGIの植原亮輔さんと渡邉良重さんにより、ノート、マグカップ、トートバッグが作られている。彼らは企業やブランドのアートディレクション、ファッションやプロダクトなどのデザインを行うほか、自身の作品も作り続けるアーティストでもある。Sサイズのノートは分厚めの中綴じで、クラフト感のある紙質が気持ちいい。

左から、ノート(L)400円、マグ1,200円、ノート(S)500円。
左から、ノート(L)400円、マグ1,200円、ノート(S)500円。
積み木は非売品。
積み木は非売品。

〈TREEHOUSE〉のロゴは積み木にもなっていて、さまざまな形でディスプレイされている。デザインの面白さを味わえて、ショップだけでもミュージアムのよう。これは大人も子どもも一緒に楽しめそうだ。

 

クスノキと共に育つ、ミュージアムとショップ。

ビュフェの妻、アナベルが植えたクスノキは樹齢50年以上になり、美術館を覆う勢い。ぼんやり眺めていると、ビュフェや美術館の歴史に想いを馳せてしまう。ショップに集う子どもたちは、クスノキに見守られながら育っていくだろう。今までとこれからを考えながらゆったりと過ごせるのも、非日常の旅先ならでは。



Text:Kahoko Nishimura
Photo:Natsumi Kakuto



いつもと違う静岡県観光には、長泉町の〈TREEHOUSE〉がおすすめ。

TREEHOUSE(ツリーハウス)


所在地静岡県長泉町東野クレマチスの丘515-57
アクセス三島駅から無料シャトルバスで約25分
電話番号055-986-1300
URLhttps://www.buffet-museum.jp/information/tree-house/
営業時間3月〜10月:10:00〜17:00、11〜2月:10:00〜16:30
休業日水曜、木曜、年末年始

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。