レトロビルの一室に生まれた、“問い”を大事にする本屋
そんな船場地域は近年、新しい変化を遂げつつある。丼池(どぶいけ)繊維会館をはじめ、リノベーションされたレトロビルに新しいお店が続々と入るなど、さらに盛り上がりをみせているのである。今回訪れた、丼池筋沿いにある本屋〈toi books〉もそのひとつ。「昔は問屋に用のある業者やビジネスマンが多いエリアでしたが、ここ5年くらいで新しいお店を目的地にする若い人が増えています。当店の営業を始めた2019年以降にも古着屋さんや飲食店が続々とオープンしているみたいです」と〈toi books〉店主の磯上竜也さん。
店名の「toi」には「問い」の意味を込めたそう。本を読んだ際に求める答えが得られるとともに、新しい問いを運んでくれるような気づきのある本をセレクトして置いている。利用するお客さんは20〜30代の女性が中心。書店員時代に文芸書担当だったこともあり、文芸書や詩集、エッセイ本などの読み物も豊富だ。
ユニークなキーワードに惹かれる、工夫をこらした書棚
〈toi books〉の古本スペースの書棚は、思わず立ち止まってしまうような不思議な造りになっている。小さな棚に、「編集の提案」「それぞれの暮らし」などのキーワードとともに本が並べられている。これは本に読み慣れない人をターゲットに、磯上さんが考えた仕掛けなのだそう。
「本がずらりと並ぶと、読書が身近でない人はどこを見ればよいかわからなくなってしまうという声があったので、お客さんが最初に注目する部分を思い切って狭める工夫をこらしてみました。まずはキーワードを見てもらうことで、興味がある本にたどり着きやすいのではないかと思ったんです」
「訪れた人が興味を持つきっかけになればと、引っかかりのある言葉を選んでいます。実際に読んでみて、読者がそのキーワードとの関連性を見つけられなくても良いんです。別の気づきや関連性を自分なりに見つけるのも読書の楽しみだと思っています」
まさに「問い」をコンセプトにする〈toi books〉らしい仕掛けといえる。
秋田の『横手焼きそば』がなぜ有名になったのかを深掘りしていく章では、読み終わった後に無性に『横手焼きそば』が食べたくなりました。バックグラウンドまで踏み込むことで、もっと豊かな風景が見えてきますし、旅の余韻も変わってくるはずです」〈toi books〉ではオープン当初より続けている店内イベントを、最近ではオンラインでも開催。本の楽しさを広める活動により力を入れている。5坪の小さなスペースながら、多くの「問い」が散りばめられ、読書初心者にも優しいお店〈toi books〉。読書を始めたいと思ったときにぜひ立ち寄りたい場所だ。
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う大阪府観光には、大阪市の〈toi books〉がおすすめ。
toi books
所在地 | 大阪府大阪市中央区久太郎町3丁目1-22 OSKビル204号室 |
アクセス | 地下鉄御堂筋線「本町」駅から徒歩約2分、地下鉄堺筋線「堺筋本町」駅から徒歩約5分 |
URL | https://mailtotoibooks.wixsite.com/toibooks |
@toibooks | |
営業時間 | 12:00〜19:00 |
休業日 | 不定休 |
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