繰り返し通いたくなるような居心地の良い古書店
都心へのアクセスが良く、駅前の賑やかな繁華街と、閑静な住宅街のバランスがとれた街・吉祥寺。駅南側には井の頭公園があり、自然の豊かさも魅力。首都圏の「住みたい街ランキング」では上位常連の街として知られている。そんな吉祥寺には個性的な書店が多くある。今回訪ねる古書店〈百年〉もそのひとつ。ビル2階の入り口から入ると、店内は明るく居心地の良い空間が広がっている。
吉祥寺はもともと馴染みのあった街だという樽本さん。〈百年〉のある昭和通りはもとより人通りの多い場所だったが、当時2階の本屋が珍しかったことから、オープン3~4年はなかなか人が来ず、苦労した経験もあるという。コミュニケーションを大切にする本屋を目指して、1年目から本屋と作家さん、お客さんをつなげる店内イベントを積極的に開催するなど、徐々に知名度を上げていった。
「吉祥寺は高い建物がなく、開けたエリア。ランドマークがなく一極集中でないからこそ、井の頭公園や、こちらの北口側など、さまざまなブロックを流動的に歩けて楽しめます。一ヵ所だけで完結せず、散歩が楽しめる街という部分に魅力を感じています」
コミュニケーションを活発に、知見をシェアする場所を目指して
〈百年〉を始めた当初は、「自分と同世代のお客さんが満足できる本屋を目指した」と話す樽本さん。現在はオープン当初からの常連客だけでなく、大学生など20代の若者も訪れる。一方で本を売りに来る年配の利用者も多いなど、幅広い世代の方に利用されている。
「選書する本のジャンルは決めておらず、幅広く置いていますし、基本何でも買い取っています。オープンしたばかりの頃はセレクトしていたのですが、今思うと自分の知識や経験不足が原因だったのかなと感じます。今はどんな本でも良いところを見つけられるようになりました。古本屋はシェアする場所だと思っていて、お店とお客さんがコミュニケーションをとって知らなかった知見を提供し合う、そんな本屋さんを目指していきたいですね」
「本の価格はインターネットのショッピングサイトなどを参考にして付けているわけではなく、なぜその値段をつけるのか、相場の先にある理由を見せることが大事だと考えています。その積み重ねで僕らが何を考えているか、お店のベースが何なのかを伝えることにつながると思っています」
「作者は、アメリカのアパラチア山脈沿いに伸びるロングトレイル『アパラチアントレイル』を歩きながら、道についてだけでなく、社会や哲学にまで思いを馳せます。その中に、“道を歩くことは世界を理解すること”という話が出てきて、旅も同じことだなと感じました。
さらに感銘を得たのは、“「反感ではなく協力が、疑念ではなく信頼が、競争ではなく学びあいがある」場を。”という一文。今世間に必要な場だと思いますし、本屋もそういう場所でありたいと感じています」
「本屋ほど、平等な場所はないと思っています。100円から高額の本まで、さまざまな価格帯の商品が置いてあるのは、他のお店にはない古本屋の特徴です。誰にでも開けた平等な場所として古本屋は心地良いし、吉祥寺の街の雰囲気にも合っていると感じています」
誰でもどんなときでも、温かく迎え入れてくれる〈百年〉には、今日もほっとするような居心地の良い時間が流れている。
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う東京都観光には、武蔵野市吉祥寺の〈百年〉がおすすめ。
OLD/NEW SELECTBOOKSHOP 百年
所在地 | 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-2-10 村田ビル2F |
アクセス | JR中央線・京王線 吉祥寺駅から徒歩約5分 |
URL | http://www.100hyakunen.com/ |
@100hyakunen | |
営業時間 | 12:00〜20:00 |
休業日 | 火曜 |
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