漁村のなかにひっそりと佇む不思議な本屋
右から〈トンガ坂文庫〉を運営する豊田宙也さんと本沢結香さん
〈トンガ坂文庫〉は本好きだった2人が2018年にオープンしたお店。2人とも他県出身だが、仕事などの関係で九鬼町を訪れ、出会ったという。
地元の大工さんや、友人のデザイナーなど多くの人の協力を得て内装をリフォーム。
三重県は和歌山県と同じく、ほぼ全国に存在する古書組合がない県。当時は三重県自体にも本屋が少なかったという。現在は〈トンガ坂文庫〉をはじめとした個人書店が増え、イベントの開催にもつながり、盛り上がりつつある。
来てもらった方の心に1冊でも刺さる本を
〈トンガ坂文庫〉に置かれている本の選書は、古本や新書に限らず、2人で協力して行っている。自分たちが好きな本だけでなく、この辺りの地域が出てくる本や人文哲学系の本など、じつにさまざまなバリエーションの本を置いている。たとえば九鬼町つながりで、哲学者の九鬼周造の本も揃えている。九鬼周造は九鬼水軍を率いた戦国武将の子孫であり、自らのルーツを訪ねるため実際に九鬼町を訪れたこともあるという人物だ。
特に、九鬼町にちなんだ本は良く手に取ってもらえるそう。今回、旅におすすめの本として紹介してくれた『ニッポン周遊記』(池内 紀)もそのひとつ。「この本は全国の町や村を訪ねる旅エッセイで、九鬼町が出てきます。出版元である青土社に尾鷲市出身の方がいて、たまたま知り合った際に本を紹介してもらったんです。著者の池内さんは九鬼に来る際に電車を乗り過ごしてしまい、ひと駅分歩くというところから九鬼町の旅が始まります。かなり長い距離なんですけどね(笑)。道中の地元の方との会話や、九鬼の歴史なども交えて紹介していて、自分も知らなかったことが発見できるのがおもしろいです」(本沢さん)
〈トンガ坂文庫〉だからこそ良い意味で雑多さを目指し、お客さんのことを第一に思った本屋を続けることが今後の目標だそう。九鬼町唯一の本屋は、これからも人との交流を生み、町の良さを伝え続ける場所になるのであろう。
Text:Ayumi Otaki
Photo:Shinya Tsukioka
いつもと違う三重県観光には、尾鷲市の〈トンガ坂文庫〉がおすすめ。
トンガ坂文庫
所在地 | 三重県尾鷲市九鬼町121 |
アクセス | JR九鬼駅から徒歩約20分 |
URL | https://www.tongazakabun.co/ |
@tongazaka_bunko_ | |
営業時間 | 11:00〜17:00(土日祝のみ営業) |
休業日 | 不定休 |
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