旅の断片的な映像が蘇る時、その旅で聴いていた音楽も鳴り響く。

中村一義の「メキシコ」は、マラケシュからサハラ砂漠に向かう車中の中で聴いていました。広大な赤っぽい荒野と強い陽光。シンガポールから来た若いカップルと、カサブランカの妖艶な未亡人と共に、いつ故障してもおかしくないようなボロボロのワゴン車で1日10時間以上走り続ける過酷なツアーに参加していた時の想い出です。

歌詞の内容とその過酷な道程とは何の関係もないのですが、その時ずっと聴き続けていた様々な曲の中で、この曲は痛烈に記憶に残っています。なぜかは分からないのですが、この曲がかかったとき、僕は泣きそうになったのです。その時の光景や状況と、自身の心境とこの曲調がカチッとはまったのでしょうか。そういうことって皆さんにもありますよね?「旅」にまつわるプレイリストをつくるお話を頂いた時に、真っ先に思い浮かんだのが、この曲と、その光景でした。

30代〜40代は、毎年のようにどこかに旅に出掛けていました。色々な国、色んな場所、色んな人。断片的な映像が沢山残っています。ふとした折に、何かのきっかけで、その断片的な映像が蘇ってきたりします。そんな時はかなりの割合でその旅で聴いていた音楽も鳴り響いています。必ずしも、その蘇ってきたシーンや場面でその音楽を聴いていたわけではないとは思いますが、先の中村一義の「メキシコ」が荒野の光景と強烈に結びついているように、何かしらその旅ごとに、あるシーンごとに、その時に聴いていた特定の音楽が紐づいていたりするのです。


今回のプレイリストは、過去の色んな旅を思い返した時に、そこに同時に鳴り響いていた音楽だけをかき集めました。なので「旅」とは何の関係もない曲も沢山あります。僕の記憶の中の旅と結びついている曲のリストです。極めて個人的な想い出と結びついた音楽ばかりなので、ちょっと古い曲が多いです。今回はあえて日本人アーチストの曲だけにしました。何かしら制約がないと、曲が際限なく溢れてきてしまい、リストにならないからです。僕はこのプレイリストを作りながら色々な旅を懐かしく思い起こしていましたが、そんなことしていると、やっぱりまた旅に行きたい気持ちが立ち上がってきました。早く旅に行きたいですね。
 


1. WONDER WORDスーパーカー
2. BABY BLUEフィッシュマンズ
3. メキシコ中村一義
4. Thank You, Babyゴダイゴ
5. Swanky Streetthe pillows
6. 奇跡くるり
7. 夏なんですはっぴいえんど
8. 恋におちたらサニーデイ・サービス
9. 唐人物語サザンオールスターズ
10. スウィートソウルKIRINJI
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Text:Shoichiro Kimura
Cover art:Yoshiyuki Okada


木村祥一郎(きむらしょういちろう)

1972年生まれ。1995年大学時代の仲間数名とITベンチャー企業を起ち上げる。以来18年間、商品開発やマーケティングなどを担当。2013年6月家業である木村石鹸工業株式会社へ。2016年9月、4代目社長に就任。石鹸を現代的にデザインした自社ブランド事業を展開。
https://www.kimurasoap.co.jp/