守っていきたい、昔ながらの食材の旨み。
素材の力を信じて作られる、優しく力強い食事。
シグネチャーとなる「おむすび膳」だけは、食材を変えつつどの季節でも提供される。自然釉の風合いが素敵なメインの器は辻村史朗さんによる作だ。古代米と白米のおむすびに添えられているのは、だし巻き卵を中心に、煮物、焼き物、揚げ物など、調理法の違うさまざまな副菜。控えめの味付けで、じんわりとしたおいしさだ。「動物性の食材はできるだけ使わないのがベースの考えで、出汁に頼らず野菜の力を信じています」とシェフ。4種の味噌をブレンドして奥深さを追求した味噌汁は、玉ねぎを炊いて引き出した旨みもプラスされている。
春、夏、秋と変化する畑の景色を食卓に。
「おむすび膳」以外には、一汁一菜の定食や麺料理など3〜4種類のランチが用意されている。その季節にとれる食材次第で料理を考えるため、和食だけでなくイタリアンや中華などさまざまなジャンルに。この夏いただけるのは、ナスの大豆そぼろあんかけと冷や汁の定食。織部や志野焼など、同じメニューを頼んでもそれぞれ違った器に盛られるのも楽しい。
研鑽を惜しまないシェフの革新的なレシピ。
美術館が休みになる冬季は、シェフの大切な修業時間。この期間に他のレストランで働きながら、腕を磨いているのだそう。そうしてブラッシュアップしながら、ここでしか食べられない新しい料理にもトライしている。たとえば取材の日にオンメニューしていたのが「桃谷そば」。動物性食材を使わずにスープを作ることにこだわり、試行錯誤して出来上がった2種のラーメンを考案した。トッピングの野菜も美しく、お腹も心も満足する。「あっさり派の方に」という「桃谷そば 黒」。昆布だしを土台に、薄口、濃口、焦がして香りを立たせた大和醤油と3種の醤油を掛け合わせたスープだ。一方、「桃谷そば 白」は、昆布だしと野菜だしに3種の白味噌を混ぜたスープ。「定食の味噌汁もそうでしたが、同じ系統の調味料を何種類も重ねることで奥行きのある味になるんです。動物性食材を使わずにおいしいスープを作るのは大変でしたが、今回納得のいく味が完成しました」と、シェフも自信の作だ。人気メニューは来季も登場する可能性が高いから、出会えたらぜひ試してみて。
大自然の中で、大自然を味わう。
美術館まではJR石山駅からのんびりバスに揺られて約50分。おいしい昼食を目指し、緑の中を満喫しよう。
Text:Kahoko Nishimura
Photo:Natsumi Kakuto
いつもと違う滋賀県観光には、MIHO MUSEUMの〈Peach Valley〉がおすすめ。
Peach Valley
所在地 | 滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300 |
アクセス | JR石山駅からバスで約50分 |
電話番号 | 0748-82-3411(美術館代表) |
URL | https://www.miho.jp/restaurant/ |
営業時間 | 11:30〜14:30 |
休業日 | 月曜(祝日の場合は各翌平日)、冬季、展示替え期間 |
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