旅に出た時に、実際に住んでいる人の話を聞くと、町の風景が違って見えてくるということがあります。ただの観光客として見ていただけでは分からなかったことが、地元の方の目線を通して急に解像度が上がるという感じでしょうか。真鶴での取材の後に町を歩いていると、まさにそのことを実感しました。
まず向かったのは町役場。真鶴は独自のまちづくり条例で「美の基準」というものを設けています。それがとても興味深い内容なのですが、書物としてまとめられた「美の基準デザインコードブック」が町役場で手に入るといいます。
2階の「まちづくり課」で無事購入。パラパラとめくると気になる項目ばかりです。
曰く…
  • 敷地の一番良い場所には、決して建物を建てないこと。
  • 新しい建物の庭には、必ず実のなる木を植えると良い。
  • 人が立ち話を何時間もできるような、交通に妨げられない小さな人だまりをつくること。

などなど…。「美の基準」が作られたのは20年以上も前。そのおかげでバブル期にみだりに開発されるなどということもなく、町の景観は今も守り続けられています。歩いてみると、たしかに路地(真鶴独自の言い方で背戸道-せとみち-と言うそうです)がたくさんあり、斜面には緑が多く残され、たくさんの実のなる木が茂っています。
「美の基準」を実感しながら町歩き。少々お腹が空いたところで向かったのは、取材先で「ケニーに行くといいよ」とおすすめされたピザ屋さん。正式には「真鶴ピザ食堂ケニー」、確かに外観は昔ながらの食堂のようですが、素敵なロゴの看板やメニューがちらりと伺えます。迷わず入ると店内も食堂…でも少しアメリカンダイナーのような雰囲気もあり、不思議な魅力があります。

聞くと元々こちらは大衆食堂だったそうで、その雰囲気を残したままリノベーション。じゃあ、その長いカウンターも…と思ったら、こちらは残された食堂の雰囲気に合わせて作ったとのこと。古いものの残し方、そして新しいものの馴染ませ方が絶妙です…!
さてメニューを眺めてみると、さすが真鶴。干物、しらす、青海苔…とピザとは思えない食材たちが並びます。といいながら生ハムやサラミなどスタンダードな具材にも惹かれてしまって、ハーフ&ハーフで注文!
磯の香りとチーズの最高な組み合わせ、グッと来る生ハムの塩気を感じつつ、ハフハフ言いながら、シェフの向井研介さん(けんすけさんだから「ケニー」!)に話を聞きます。向井さんは2016年に東京からご夫婦で移住してこられたそうで、真鶴の魅力にどっぷり浸かっている様子。真鶴が紹介されているいろんな本や雑誌を見せてもらいながら、人や町の魅力を聞きます。そう、真鶴に住んでいる方々は、こうして真鶴の素晴らしいところをどんどん紹介してくれるのです。
そして一緒に働いている奥さんの日香(にちか)さんは作家でもあり、最近の活動はラグマット作りとのこと。2階にアトリエがあると聞き、特別に拝見させてもらいました。タフィングと言われるプシュッ、プシュッと毛糸を打ち込みながら、絵を描いていくように作る方法だそうで、その様子を見ているのも楽しいです。
モチーフとなるのは、真鶴の道端にある植物や庭のようなものまで。それはもう、とっても素敵です。
ケニーはグッズも魅力的。Tシャツや帽子、ステッカーにキーホルダーと。全部欲しくなります。
Tシャツを購入すると、パッケージはなんとピザボックス!袋に入れて手に持てば完全にピザをテイクアウトした人。楽しくなりますね。
ふうかちゃん(向井ご夫妻の娘さん)に満面の笑顔で見送ってもらってから、次に向かうのは「草柳商店」。ケニーで港の方に面白い酒屋さんがあって角打ちもできるよ…と教えてもらい、向かわずにはいられません。
ケニーからは徒歩で15分ほどということで、町を見ながら歩いて行くことに。
味わい深いバス停を横目に、ぐるっと回って真鶴港へ。釣り人が佇む穏やかな景観。ここでも「美の基準」のありがたみを噛み締めます。
真鶴港から少し坂を登ったところにあるのが目的地の草柳商店。
神奈川県の地酒を中心に、ビール、焼酎となんでもあります。懐かしい駄菓子なども置いてあって思わず手に取ってしまいますね。ということで角打ちスタートです!地元のお店って常連さんも多くて、ともすると入りづらい…なんてこともありますが、この草柳商店に限ってはそんな心配はご無用です。4代目の店主はミュージシャンでもある“しげさん”。そのお母さんの“あーちゃん”は、「どこから来たの?」から始まり、お店のこと、お客さんのこと、真鶴に住んでいる常連さん達のこと、いろいろなことを教えてくれます。ちょうどすれ違ったお客さんたちとも話が盛り上がってましたね…と話を振ると、シゲさんが「山田くん」の話をしてたんだよと。。
“あーちゃん”と今やすっかり常連さんの“山田くん”
“あーちゃん”と今やすっかり常連さんの“山田くん”
ん…?山田くん??
実はピザ屋のケニーで偶然お会いしたのが、イラストレーターの山田将志さん。あとで草柳商店さんに行きますよ〜なんてお話ししていたのですが、なんと、その山田さんの話で盛り上がっていたと…。

山田さんは元々野外芸術祭に参加するために真鶴に来たところ、すっかり真鶴の人や町に魅了されてしまって毎晩のように草柳商店で宴会を行っていたそうです。芸術祭が終わったら一度は横浜の自宅に戻ったのですが、再度真鶴にやってきて、その時に持ってきたのが「草柳商店の真鶴の絵」。その絵はTISというイラストレーションの大きなコンペティションで入選します。そのまま真鶴に移住して、そして結婚…さらにこの素晴らしいストーリーをしげさんは歌にして(「輝いてお月様」サナギメン)…と、盛りだくさんなのですが、コトの顛末はしげさんの噺家さんのような語りで実際に耳にするのをおすすめします!
とにかく会う人会う人、みなさん真鶴が大好き。真鶴に住む人も真鶴に訪れる人もみんな仲よくなってしまうような町です。地元の方々が導いてくれるように町を歩き回っているうちに、我々もすっかり真鶴の虜に。今回は宿泊できなかったので、次回は泊まって夜の真鶴も満喫します!


Text & Photo:tabigatari editorial department


暖かい地元の人たちと触れ合うには、真鶴町の町歩きがおすすめ。

真鶴ピザ食堂 KENNY 


所在地神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴402-1(Google Map
アクセスJR真鶴駅から徒歩1分
電話番号0465-68-3388
URLinstagram.com/manazuru.kennypizza
営業時間※詳細はInstagramにてご確認ください
定休日※詳細はInstagramにてご確認ください

 

草柳商店


所在地神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴610-1(Google Map
アクセスJR真鶴駅から徒歩15分
電話番号0465-68-1255
URLinstagram.com/kusayanagi_shouten/
営業時間10:00〜19:00
定休日木曜

 
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