都会的でありながら、居心地の良いカフェを発見。


旅のスタート地点、東京駅から歩いていくと、オフィスビル群の中にミュージアムが見えてきた。かつて〈ブリヂストン美術館〉として親しまれた場所が、2020年に館名を新たにした〈アーティゾン美術館〉だ。約5年の歳月をかけて建て替えられたこのビルは、開館とともに数々のデザインアワードも受賞し、それだけでも見どころがある。
1階のカフェは大きなガラス窓に囲まれた2層吹き抜けの空間で、街に開かれた印象。ここから6階までのミュージアムのデザインは東京を拠点とするデザイン事務所「TONERICO: INC.」が手掛けている。壁際の飾り棚に目を向けると、イタリアのデザイナー、エットレ・ソットサスによるヴェネチアングラスなど、さまざまなアートがディスプレイ。センスのいい家に遊びにきたようだ。          

東京の洗練された空気を感じるランチタイム。

セットはディナー、ランチともに2,600円。サラダ、メイン、パン、プチデザート、食後のドリンク付き。
セットはディナー、ランチともに2,600円。サラダ、メイン、パン、プチデザート、食後のドリンク付き。
カフェでは、気軽に楽しめるランチセットが主。パスタやリゾットなどのメインを選べる、プリフィックスコースだ。どの料理も、まずは香りに心を奪われる。オープン当初から人気を集めるという海老のリゾットは、蓋付きのガラス皿に盛られて登場。蓋を開けると、ヒバのスモークがもくもくと広がり、食べる前からワクワクしてくる。こんなふうに、海のものと山のものを掛け合わせるのが、料理人のこだわりだそう。
森の香りに癒された後に改めて料理を見ると、赤海老が美しく盛り付けられていて、思わずうっとり。炊き方も面白い。昆布だしで炊いた後、海老出汁のアメリケーヌソースで煮込んでいるという。旨みがどんどんと掛け合わされ、奥深い味わいになる。米は新潟のコシヒカリ、魚沼リゾット米という2つの米をブレンドすることで、もっちり感と甘みを共存させている。
ウニパスタは+300円。
ウニパスタは+300円。
ウニのパスタにも、海と山の幸が組み合わされている。全面を覆っているのは、生のマッシュルームのスライスだ。キノコの香りが漂い、食欲をそそられる。
パスタを持ち上げてみると、ウニの粒がたっぷり絡み付いてきた。麺はなんと自家製のタリアテッレ。美術館の中にあるレストランで、ここまで手が混んでいるのは驚きだ。黄身を多く用いた手打ちの麺はもちもち。ミルキーなグラナパダーノチーズも混ぜながらいただくと、複雑ながらお互いを高め合う、素材選びの妙を感じられるはずだ。
 
セットのパンは、バゲッティーヌ、サワードゥ、くるみの中から選べる。エクストラバージンオリーブオイルとともに添えられているのは、ジャージーミルクの塩ホイップだ。カッテージチーズのような淡白な味わいで、さっぱりといただける。食事の間に楽しむ飲み物は、各テーブルにサーブされるハーブウォーター。フルーツやハーブなど、季節に合わせて選んだ食材を漬けたもので、美容や健康にも効果があると注目されている。この日は、金柑やイタリアンパセリなどが使われていた。ビジュアルも爽やかで、家に帰ったら真似したくなる。
食後のプチデザートまで、本格的で完成度が高い。この日登場したのは、紅玉リンゴを使ったタタンパフェだ。ゼリー、クランブル、カスタードなど、パーツはそれぞれ単体で食べてもおいしく、混ぜていくとさまざまな味に出会える。デザートに合わせ、コーヒーは炭焼きのストロングタイプが選ばれているそう。
小さなパフェは見た目もかわいらしい。プチデザートは季節によって内容が変わる。
小さなパフェは見た目もかわいらしい。プチデザートは季節によって内容が変わる。

自家製ケーキとハーブティーで軽やかなお茶の時間を。


カフェタイムの注目は、時間をかけ、何度も試作して完成したというシフォンケーキ。焼き色、形、どれをとっても美しく、いつまでも見ていられそうだ。
プレーンのシフォンケーキはドリンクセットで1,400円。
プレーンのシフォンケーキはドリンクセットで1,400円。
バニラ風味の「プレーン」のほかに、ジャスミンと桃のリキュールを合わせた「ジャスミン」、ラムレーズンとほうじ茶を使った「ラムレーズン」が定番で、季節のフレーバーが登場することも。フワフワとした食感の中に、それぞれの香りが広がり、心もふっと軽くなる。デザートセットにおすすめだというのが、栃木のハーブティー店〈ラリシェスボタニック〉の「マダム・ユペール 」。バラとレモングラスのブレンドティーで、シナモンが香る大人な味わいだ。実は、ランチセットにつけられるハーブティーも同じ店から仕入れるオリジナルブレンド。こちらはミントとレモングラスが主体で、スーッとした味わいが食後にぴったり。
外の光がたっぷり入る店内では、ガラスポットに入ったハーブティーがより綺麗に見える。ぼんやりと眺めながら飲んでいると、旅の途中で少しの間ゆっくりと過ごせそうだ。

 

食とデザインを同時に楽しむ。


食事を終え、再び店内を見回していると、隅々までデザインが施されていることに気づく。家具はオリジナルで作られ、イスは「KYOBASHI」と名付けられたものだそう。スタッフの制服も素敵で、聞けば〈N.ハリウッド〉のデザイナー・尾花大輔さんによるものだそう。今後は美術館の中を巡って、一つ一つのデザインに触れてみたい。

Text:Kahoko Nishimura
Photo:Natsumi Kakuto



いつもと違う東京都観光には、中央区京橋の〈アーティゾン美術館〉がおすすめ。
 

アーティゾン美術館 ミュージアムカフェ


所在地東京都中央区京橋1-7-2 アーティゾン美術館1階
アクセスJR東京駅から徒歩約5分
URLhttps://www.artizon.museum/user-guide/museum-cafe/
営業時間11:00〜18:00(ランチ11:00〜13:30LO、カフェ14:30〜17:30LO)、展覧会開催期間の祝日を除く金曜日のみ 11:00〜21:00(ランチ11:00〜13:30LO、カフェ14:30〜16:30LO、ディナー17:00〜20:00LO)
※ランチ、ディナーは90分の入れ替え制
休業日展覧会開催期間:月曜(祝日の場合は営業、翌平日休業)、年末年始
展示替え休館日期間:月曜(祝日の場合は営業、翌平日休業)他

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。