余白をたっぷりとった絵のようなオフシーズンの旅。
シーズン真っ盛りの活気に満ちた街にも元気をもらうけれど、オフシーズンの街を訪れるというのも好きだ。
眠たげで、どこか寂しげな街は、余白をたっぷりとった絵のようである。
そうした場所に身を置いていると、呼応するように自分の中にも余白が広がっていく感覚があってとても落ち着く。
冬にポルトガルの小さな港町を訪れたときのこと。
その日は朝からしっとりと雨が降っていた。夏には人で溢れかえるであろう浜辺にはカモメの小さな群れが波打ち際に見えるくらい。そんな余白たっぷりの風景の中を1本の赤い傘をさした老夫婦がゆっくりと歩いている。傘の下で寄り添う二人は、もの静かに今この時間を心から慈しんでいるように見えた。僕はこの風景を宿の食堂から見ていたのだが、窓枠で切り取られた風景がまるで額装された絵のようであった。
中学生の頃、CDラジカセを手に入れてはじめてミックステープを作った。
それから現在にいたるまで誰に頼まれるわけでもなく数えきれないくらいのミックステープ(プレイリスト)を作りつづけてきたのは、そこにひとつの物語の情景を投影する楽しさがあったからだと思う。
今回は、ゆったり移動する夜の列車、雨の日の朝、出会いと別れ、そして帰路など、オフシーズンの物憂げで、静かな旅を思い描いて、余白のある曲を選んだ。
曲と曲の繋ぎ目にもどうしてもこだわってしまう。
曲間も合わせて楽しんでいただけたら。
1. Summer Places | sam prekop |
2. Blink | Sonic Youth |
3. Waves Know Shores | The Vernon Spring |
4. Somebody That I Used To Know | Elliott Smith |
5. Glide path | Chicago Odense Ensemble |
6. Two Doves | Dirty Projectors |
7. I Sing High | SAM GENDEL & SAM WILKES |
8. PS | The Books |
9. Tokyo | The Books |
Text:Makoto Ueda
Cover art:Yoshiyuki Okada
植田真(うえだまこと)
画家/絵本作家
風、水辺、樹々といった原風景が、作品制作の軸となっている。ライブペインティングでは、ギターを用いた即興音楽をループ&多重録音し、ペインティング⇄音楽の往復の中で絵画制作をしていく。絵本に『りすとかえるのあめのたび』(BL出版)など多数。
www.silentphase.com