その美しさは「心のごちそう」。ヴェネチアン・グラスの魅力に出会う。

ヨーロッパ近代ガラスの始まりは、ヴェネチアと言われているのはご存じだろうか。正確な起源は謎に包まれているものの、少なくとも10世紀にはガラスを作る職人がいたという記録がある。今回は、日本で唯一、ヴェネチアン・グラスを常設展示している「箱根ガラスの森美術館」を訪ねた。

都内を中心に飲食店を運営する「うかい」グループによるこのミュージアム。海外でのレストラン視察をきっかけにヴェネチアン・グラスに興味を持ち、「日本にもこの素晴らしさを伝えたい」と開館することになったのだそう。館内には、特にヴェネチアン・グラス黄金期の15世紀から18世紀ごろの作品や現代作家によるガラスアートを展示。開館当初の思いにもあったという、「心のごちそう」が表現されている。

ミュージアムショップ館の棟に入ると、中はヴェネチアの街を散策しているような雰囲気。地下1階から地上3階までカラフルなガラス製品が所狭しと並べられ、その数は約10万点にも上るという。インテリア雑貨も日用品もアクセサリーも、繊細なガラスのアートだ。

 

ヴェネチアン・グラスの伝統技術を間近で見る。

ミルフィオリ・グラスの置き時計7,150円。見るたび華やいだ気持ちになれそう。
ミルフィオリ・グラスの置き時計7,150円。見るたび華やいだ気持ちになれそう。
ヴェネチアン・グラスの特徴の一つに、「モザイク・ガラス」という技法がある。色ガラスを組み合わせ花模様にしたものを金太郎飴のように切り分け、さまざまなデザインのものを集めて板状に固め、一つの作品に。全体に花が咲いているように見えることから「ミルフィオリ(=千の花)グラス」とも呼ばれている。
左はアンティークビーズのネックレス8,580円、右はシックな色合いのネックレス7,040円。
左はアンティークビーズのネックレス8,580円、右はシックな色合いのネックレス7,040円。

数ある作り手の中でも、その技術と芸術性で名を馳せる工房が「エルコレ・モレッティ」だそう。古代ローマのガラス製法を用いたり、独創的なアイデアを形にしたりと、数々のアーティスティックな作品を生み出してきた。ショップにはネックレスやプレートなどが置かれている。

職人が一つ一つのミルフィオリ棒(花のパーツ)を作り、一粒ずつ手作業で並べているため、作品それぞれの柄も違えば、形も微妙に異なる。どれをとっても存在感があるし、雰囲気がガラリと変わるから選ぶのが難しい。日常使いするのは勿体ないほどの美しさだ。

ヴェネチアでは、レースも特産品だ。16世紀の吹きガラス職人たちが、その美しさをガラスで表現しようと編み出したのが、この写真に見られる「レース・グラス」という技法。幾何学的な文様は絵付けではなく、ガラスをねじりながら作り上げる技巧だ。繊細なデザインに、思わずうっとりと見惚れてしまう。

たとえばレース・グラスの小さな一輪挿しでも10,000円は下らない高価な品ばかり。一度は近くで見ておきたい技術だ。
たとえばレース・グラスの小さな一輪挿しでも10,000円は下らない高価な品ばかり。一度は近くで見ておきたい技術だ。

現在では工房が少なくなり、現地でもなかなか手に取れない貴重な品が間近で見られるから、ショップも一つのミュージアムと言えよう。お気に入りを見つけたら、ぜひ手に入れたい。

リング3,300円。
リング3,300円。

ソーダガラスを使ったヴェネチアのガラスは固まるまでに時間がかかる分、その間に装飾デザインを施すことが可能。また、色ガラス製の顔料によって絵付けをした作品も存在する。でも、中にはこのリングのように色ガラスを埋め込むように敷き詰めて文様を作った素朴な作品も。時代や工房によって異なる技術を見ていくのも楽しい。

 

ガラスならではの表情を愛でる。


つるんとした手触り、色が混じり合うようなデザインは、まさにガラス独特の風合い。かわいらしい小鳥のオブジェは、全体のシルエットやカラーはもちろん、目の位置や形も個性さまざま。キュンとする一羽を連れて帰り、玄関やデスクの脇に飾ってみては。目があうと、ほっこり癒してくれる。

サイズも小鳥と同じくらい。一体6,600円。
サイズも小鳥と同じくらい。一体6,600円。

一方、カットガラスの場合は光の反射によって輝きを放つ。美術館のシンボル「光の回廊」にも約16万粒のクリスタルガラスが使われ、風に揺れるたびにキラキラと光り、入射角によって違う色で反射する。このガラスを使ったオリジナルのツリーが、ショップで販売されている。

サイズは卓上における気軽な展開。ワイヤーを動かして形を変えることもできるから、置く場所によってアレンジしても。


丁寧にカットされたクリスタルガラスは、クリアとオーロラカラーを使用。オーロラカラーはピンク、イエロー、ブルー、パープルなど、背景の色によっても違った色に見える。太陽の光が当たる場所において、変化を楽しみたい。

 

お気に入りがきっと見つかる!暮らしを華やかにするガラスのアート。

ヴェネチアン・グラスのほかにも、世界各国から集められたガラスアイテムがたくさん。幅広いラインナップの中から、自分が気に入るもの、誰かにプレゼントしたくなるものが見つかるはず。

 




Text: Kahoko Nishimura
Photo: Natsumi Kakuto




いつもと違う神奈川県観光には、足柄下郡箱根町の〈箱根ガラスの森美術館〉がおすすめ。

箱根ガラスの森美術館 ミュージアムショップ館


所在地神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
アクセス箱根登山鉄道「箱根湯本」駅からバスで約25分
電話番号0460-86-3111
URLhttps://www.hakone-garasunomori.jp/shop/
営業時間10:00〜17:30(施設への入館は17時まで)
休業日美術館に準ずる(毎年成人の日の翌日から11日間休館)

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。