箱根を象徴する景色の麓に、おいしいランチがあった。

温泉、食べ歩き、リトリートなど、箱根を旅する目的は数あるけれど、美術館めぐりも人気の一つ。扱う分野にそれぞれ個性があり、一度では回りきれないほどの軒数だ。今回向かったのは、「箱根ガラスの森美術館」。ヴェネチアン・グラスを中心に展示するミュージアムだ。標高640mにある観光地・大涌谷を綺麗に望めるのは、ここだけだという。それだけでも訪れるきっかけになる。1996年に開館した「箱根ガラスの森美術館」が、都内で評判のレストランを運営する「うかい」がつくった施設だというのは、あまり知られていない事実。「うかい」は2015年からANA国内線ビジネスクラスの機内食を手がけているから、旅好きは特に聞き覚えがある名前かもしれない。一棟建のレストランは2022年10月にリニューアルし、「うかい」を冠した〈Caffe Terrazza Ukai（カフェテラッツァうかい）〉に生まれ変わった。ブラッスリーグループ総料理長の細渕賢一シェフが監修する、本格的な味が楽しめる。和食や洋食などさまざまなレストランを展開する「うかい」だけれど、ここでは美術館に合わせた料理を提供している。

 

まずは自慢の牛料理が必食。

〈Caffe Terrazza Ukai〉はお肉料理が中心。なかでも牛肉へのこだわりが強く、「特選牛」を使用している。「うかい」では、A5やA4などで示される格付け等級を使わず、独自に牛の評価基準を設けて国産の黒毛和牛を選んでいるそう。品質や飼育状況などで判断し、そのお眼鏡に適った上質な牛は、〈うかい亭〉と同じようにこのお店でも使われている。そのおいしさを享受するには、「うかい特選牛ローストビーフ」がおすすめ。低温でじっくりと調理し、ジューシーで柔らかい。噛むごとに旨みが出てくるから、パルメジャーノチーズの塩気だけでもおいしい。濃厚な赤ワインソースで、味の変化をつけても。ボロネーゼでも特選牛を使用。さまざまな部位から旨みを引き出した自家製のラグーソースに使う肉はあえて大きめにしたといい、ゴロゴロと入っている。フィットチーネとの絡みもよく、どんどんと食べてしまう。最後に削られたパルミジャーノチーズが芳醇な香りを添え、奥深さもアップ。残ったソースも、パンとともに最後まで堪能したい。パスタというよりも肉料理を食べているような満足感だ。

レストランならではの“できたて”デザートでフィニッシュ。

巷で一大ブームとなったしぼりたてのモンブランが、このレストランにも登場。落ち着いた雰囲気の店内で専門店のようなスイーツに出会えるのは貴重だ。時間が経つほどに崩れてしまう繊細なデザートだから、できたてをすぐにいただきたい。ふわふわと軽い食感のマロンクリームの下には、メレンゲ、バニラアイス、シフォンケーキが重なっている。テクスチャや風味のバランスが絶妙で飽きることがなく、このボリュームでもペロリ。和栗を贅沢に使った優しい味わいを、存分に楽しもう。

 

イタリアの空気と、爽やかな箱根の景色が融合。

店内は窓が大きく、美術館の庭園を見渡すことができる。丁寧に手入れされた庭園の植栽、日光を浴びて輝きを増すガラスのオブジェを見ながら過ごす時間は格別。風が気持ちいい季節には、テラス席に座るのも良さそう。取材時はクリスマスシーズン真っ只中。ガラスのオブジェは四季に応じて変わるようだが、キラキラとしたツリーやサンタクロースなど、見渡すとワクワクする飾り付けばかりだった。ヴェネチアン・グラスをテーマにする美術館にちなみ、店内のインテリアには現地の工芸品が飾られている。ヴェネチアのカーニバルで使う仮面、ブドウの形のランプなど、ほかではなかなか見られない品々に旅情を掻き立てられる。BGMには、世界で活躍するミュージシャンによるインストルメンタルの生演奏も。明るく楽しい時間を過ごし、帰る頃には、心も体も元気になっているはず。

Text：Kahoko Nishimura
Photo：Natsumi Kakuto


いつもと違う神奈川県観光には、足柄下郡箱根町の〈Caffe Terrazza Ukai〉がおすすめ。
 

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Caffe Terrazza Ukai

所在地	神奈川県足柄下郡箱根町仙石原940-48
アクセス	箱根登山鉄道「箱根湯本」駅からバスで約25分
電話番号	0460-86-3111
URL	https://www.hakone-garasunomori.jp/cafe_restaurant/
営業時間	10:00〜17:30（L.O.16:30、ランチは15:00まで）
休業日	美術館に準ずる（毎年成人の日の翌日から11日間休館）

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