ここにしかないものばかり、のミュージアムショップへ。

箱根湯本駅からバスで山道を進んで20分ほど、小涌谷エリアに入る。幾筋もの滝が糸のように流れる「千条(ちすじ)の滝」へのハイキングコースでも有名な、自然豊かな土地だ。ここの代表的なスポットは「岡田美術館」。勾配を生かした5層の建物の中には、東洋・日本の陶磁器や絵画などの美術品が常時約450点展示されている。

その一角にあるミュージアムショップは、ひっそりとしてコンパクトな店内ながら、見どころのある品がぎゅっと詰まっている。聞けば、並んでいる商品の大部分がオリジナルグッズだそう。ポストカードやクリアファイルなどはもちろん、ほかにも収蔵作品の美しさを再確認できるユニークなアイテムがたくさん。中でもおすすめのものをピックアップしてみた。

歴史ある器を、我が家の食卓にも。


約450点あるという展示作品の中で、圧巻なのは陶磁器のコレクションだ。1階に古代から清朝まで揃う中国の陶磁器が並び、2階は丸ごと日本の陶磁器ゾーン。大胆で力強いモチーフが描かれた古九谷、ヨーロッパの貴族に人気を博した柿右衛門、有田を統治した佐賀藩直営の窯で作られた高級磁器の鍋島焼など、貴重な品々が並んでいる。そして、4階に高麗青磁・青花(染付)といった韓国の陶磁器がまとまって展示されている。

古九谷や鍋島などのやきものは富裕層向けの高級な品だが、蕎麦猪口や豆皿など日常的に使われたやきもの・古伊万里も収蔵される。上の写真は、それをモチーフに作った蕎麦猪口。右側の紅葉模様は「染付紅葉文皿」、中央の桜柄は「染付桜文大鉢」をもとにし、本物の絵柄を違う形で楽しむことができる。一方左端の蝶々柄は、題材となる器も「染付蝶文猪口」という蕎麦猪口。内側の文様まで真似られている。

同じく、小皿や大鉢などさまざまなサイズの作品を、同じ大きさの豆皿に落とし込んだものも。蕎麦猪口や豆皿は、食器としても小物入れとしても使い方いろいろ。昔の人が愛用した器を、今のライフスタイルにも取り入れてみよう。

 

陶磁器を絵として楽しむ、ペーパーグッズ。


江戸時代、将軍家や大名への贈答品に重宝されたという鍋島焼。染付で文様を描いた上に赤・緑・黄で絵付をした「色鍋島」は特に絵画のように美しい。今も古びないデザインは、グラフィックとして楽しむこともできる。このミュージアムショップでは、丸型のハガキやシールなど、陶磁器の形に切り抜いたような紙のアイテムが作られている。

こちらは、江戸時代前期の陶工、野々村仁清(にんせい)が作った器の七宝文をピックアップし、便箋セットにしたもの。温もりのある和紙に、柔らかいタッチで絵が入れられている。七宝文はおめでたい柄として受け継がれているといい、お祝いのメッセージを贈るのにもピッタリ。

便箋2種類と封筒が入った便箋セット920円。
便箋2種類と封筒が入った便箋セット920円。

同じように、器や掛け軸などの絵の一部を配したしおりも他にないデザインだ。京都の工房に依頼して作成したお香入で、手触りや香りなど五感で楽しめる。

 

絵画をアレンジして、話題になるお土産に。

足湯は、「湯雨竹(ゆめたけ)」というシステムを使い、加水なし、100%源泉かけながしの温泉を楽しむことができる。
足湯は、「湯雨竹(ゆめたけ)」というシステムを使い、加水なし、100%源泉かけながしの温泉を楽しむことができる。

「岡田美術館」は絵画の収蔵品でも注目されている。館内に入る前にまず目を引くのが、琳派の影響を受けて作品を作る日本画家・福井江太郎による風神・雷神の大壁画「風・刻(かぜ・とき)」。ガラスに映った空の雲が絵画に被さり、移り変わる景色と共にずっと眺めていたくなる。作品の前には、源泉かけながしの足湯もあり、到着したらまずここで旅の疲れを癒したい。

館内には尾形光琳、酒井抱一、伊藤若冲など画家の作品も展示され、それにまつわるグッズも展開されている。たとえば、葛飾北斎の「夏の朝」。スマートフォンやタブレットなどの画面を綺麗にできるクリーナーになっていて、使わない時はステッカーのように貼っておける。ほかに大壁画「風・刻」の柄もあり、パッと目立つ存在に。

酒井抱一「月に秋草図」を配した手拭い。実際は白地に金銀と発色の良い岩絵具でカラフルに描かれた襖絵だが、濃紺の布地、月を輝くイエローに。作品との違いを見ることも、土産話の一つになる。

左・名品撰ぬり絵、右・ぬり絵(美術館の生き物たち)各900円。
左・名品撰ぬり絵、右・ぬり絵(美術館の生き物たち)各900円。

数あるアイテムの中でもオリジナリティ溢れるのが、作品をテーマにした塗り絵ブック。美術館では毎年夏休みにぬりえコンテストを開催しているといい、収蔵作品にまつわる絵柄を用意している。キャラクターのようなタッチで描かれた子供用、精密に再現された大人用があり、作品を真似て塗るのもよし、新たな配色で独自の作品に仕上げるもよし。

 

新たなデザインに生まれ変わったグッズを求めて。


アートに興味のある人もそうでない人も、楽しくなる品がいろいろ。人と被らないものを探したいなら、「岡田美術館」のミュージアムショップへ。



Text: Kahoko Nishimura
Photo: Natsumi Kakuto




いつもと違う神奈川県観光には、足柄下郡箱根町の〈岡田美術館〉がおすすめ。

岡田美術館


所在地神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
アクセス箱根登山鉄道「箱根湯本」駅からバスで約20分
電話番号0460-87-3931
URLhttps://www.okada-museum.com/facilities/shop/
営業時間9:00~17:00
休業日12月31日、1月1日、美術館の展示替期間

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。