作家が育つ町、信楽には、小さな名品がたくさんあった。

滋賀県南東部にある信楽町は陶磁器づくりで知られ、その名は世界にも伝わっているという。実際、この街に作られた文化施設〈滋賀県立陶芸の森〉にあるアーティスト・イン・レジデンスには、アジアやヨーロッパなど世界各国からやってくる作家が滞在。登り窯、穴窯、電気窯、ガス窯とさまざまな窯があり、滞在する人はもちろん、近隣に住むアーティストものびのびと作品づくりに取り組める。県内に住む子供たちも、陶芸を取り入れた授業を受けているとか。ここでは、地域をあげて信楽焼を担う人を育てているのだ。

〈滋賀県立陶芸の森〉には美術館もあり、その入り口にあるショップ〈6センス〉は小さいながらも見どころいっぱい。陶芸ファンがわざわざ訪れるという、珠玉のラインナップを見てみよう。

 

〈滋賀県立陶芸の森〉だからこそ手に入る、レアな作品を狙い撃ち。


店内には、アーティスト・イン・レジデンス出身の作家による品がさまざま取り揃えられている。滋賀県在住の高橋由紀子さんもその一人だ。このぐい呑のように、練り込み技法を使った作品が人気を集めている。温かな風合いと、練り込みならではの表情豊かなデザインで、どれを選ぶか迷ってしまう。
椿やすみれをモチーフにしたぐい呑。形も色合いも繊細。各11,000円。
椿やすみれをモチーフにしたぐい呑。形も色合いも繊細。各11,000円。

著名な陶芸家でありプロダクトデザイナーの小松誠さんもアーティスト・イン・レジデンスで制作し、ゲスト・アーティストとして研修会なども行った。写真は〈MOMAニューヨーク近代美術館〉など国内外のミュージアムに収蔵される、代表作のクリンクルシリーズから。紙のようなデザインと陰影を施したユニークな器は、1975年に生まれてから今までロングセラー。どのショップでも入荷すればすぐに売り切れるというから、見つけたらラッキー!

new crinkle super bag 左から#3(4,180円)、#4(2,750円)。
new crinkle super bag 左から#3(4,180円)、#4(2,750円)。

ショップスタッフによれば、信楽で制作する陶芸家には女性が多いといい、アーティストとなった彼女たちや近隣の工房が作るアクセサリーもぜひ注目したい。ポップなデザインと色使いで、コーディネートのポイントになりそうなブローチ、いつでもお守りのように身につけられそうなバングルなど、作家ごとの個性を楽しもう。

あの「たぬき」がおしゃれなプロダクトに。


信楽といえば、やっぱりたぬき。この町が海外に知られるようになったのは、アメリカで出版された『SHIGARAKI, Potters’ Valley』がきっかけだったという。1979年に出版されたこの本は、アメリカ国立スミソニアン協会の東洋美術館であるフリーア美術館とアーサー・M・サックラー・ギャラリーで学芸員を務めるルイズ・アリソン・コートによるもの。彼女が調査のために撮影した写真は、ポストカードとしてショップで販売されている。1970年代の信楽が映されたモノクロ画像で、アートのように楽しめそう。

1枚165円、8枚セット1,100円。
1枚165円、8枚セット1,100円。

生活にさりげなく取り入れられそうなグッズも。グラフィカルにデザインされた手拭いのたぬきは、よく見るとそれぞれ目線が違う。信楽のたぬきのイメージを変えるような、クールで遊び心あるアイテムだ。一方、陶芸の森オリジナルのソックスは、和ませてくれるようなかわいらしさ。センスのある信楽土産にピッタリ。

信楽たぬきソックス1,320円は紳士用、婦人用ハイソックスとバリエーションあり。「型染 武村」の狸手拭い1,430円。
信楽たぬきソックス1,320円は紳士用、婦人用ハイソックスとバリエーションあり。「型染 武村」の狸手拭い1,430円。

全国のフレッシュな陶芸家が応募する「ガチャガチャ」コレクション。


ものづくりの心を育む信楽らしい取り組みが、3年前からスタート。ショップの目玉でもある、ガチャガチャだ。カプセルの中には、デザインコンペで金賞に選ばれたアーティストによる小さくてかわいい陶芸作品が入っている。応募数は年々増え、クオリティもどんどん上がっているという。ガチャガチャで手に入るとは思えない手の込んだアートだ。

お客さんの中には、このガチャガチャだけを目的に訪れる人も。40個限定だから、売り切れるのも早いという。ショップの方に聞けば、ゆくゆくはガチャガチャの作品を集めた展示も目標にしているそうだ。

スタッフの一人のデスクには大切にコレクションが。その一部を見せてもらった。現在は「がちゃがちゃデザインコンペ2022」の募集を12月25日まで行っている。ガチャガチャとして登場する作品は、インスタグラム(@sccp_museum)でチェック。

心動かすアイテムに出会い、リフレッシュ。


個性豊かな作品を見ていると、なんだか元気になってくる。気に入ったものを持ち帰り、そのワクワクを持続させたい。



Text: Kahoko Nishimura
Photo: Natsumi Kakuto




いつもと違う滋賀県観光には、甲賀市の滋賀県立陶芸の森〈6センス〉がおすすめ。

ミュージアムショップ 6センス


所在地滋賀県甲賀市信楽町勅旨2188-7 県立陶芸の森 陶芸館内
アクセス信楽高原鐵道信楽駅からタクシーで約5分
電話番号0748-83-0909
URLhttps://www.sccp.jp/museum-shop/
営業時間9:30〜17:00
休業日月曜(祝日の場合は翌火曜日がお休み)

※記事中の商品・サービスに関する情報などは、記事掲載当時のものになります。詳しくは店舗・施設までお問い合わせください。