寒の入りを迎えることを「小寒」といい、一段と冷え込む頃です。寒稽古や寒復習(かんざらえ)という言葉があるように、寒さに臆することなく過ごしたいものです。初詣は松の内までに済ませておくのが良いとされていますが、東日本では1月7日まで、西日本は1月15日までと異なります。ちょっと足をのばして、干支にちなんだ社寺で初詣をする干支詣や美しい木工芸品に出会う旅など、年初めの新鮮な気持ちで今までにない旅の体験をしてみませんか。
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全国 × 初詣
干支詣で験担ぎ。
なじみのあるお寺で初詣もいいものですが、ちょっと視点を変えてその年の干支にゆかりのあるお寺への初詣に出かけてみませんか。干支にまつわる初詣を干支詣といい、特に縁起が良いとされています。社寺で大切にされている動物は、創建者との縁が深い、あるいは神様の使いとして信仰されてきました。そこで干支にちなんだ社寺をいくつかご紹介します。
丑(うし・牛)にまつわるのは、北野天満宮(京都府)です。学問の神様である菅原道真公(菅公)を祀り、全国約12,000社の天満宮・天神社の総本社として崇敬を集めています。乙丑(きのとうし)に生まれた道真公(菅公)は亡くなる際、「牛の行くところにとどめよ」と遺言を残し、実際に亡骸を運ぶ牛が座り込んで動かなくなった付近の寺に埋葬したという逸話から、境内には横たわった牛の像が多く見られます。牛は天神様の使いとして信仰の対象であり、なでると一つだけ願いがかなう「一願成就のお牛さん」と呼ばれるなで牛もいます。
寅(とら・虎)にまつわるのは信貴山朝護孫子寺(奈良県)です。およそ1400年前、聖徳太子が物部守屋を討伐しにいく際、道中の山で戦勝を祈ると毘沙門天王が出現し、必勝法を授かったのが寅年、寅日、寅の刻でした。太子の勝利により、毘沙門天王は寅に縁のある神として信仰されるようになったといいます。境内には巨大な張り子の大寅をはじめ、たくさんの寅の像が見られます。
巳(み・蛇)にまつわるのは日體寺(にったいじ)(京都府)です。御所の紫宸殿を中心に京都市内の十二支の方角に祀られた北辰妙見大菩薩「洛陽十二支妙見」のうち、巳の妙見大菩薩が祀られています。御朱印にも妙見大菩薩や蛇が描かれているほか、財運の白蛇柄の御守りや、へびのおみくじもあります。
未(ひつじ・羊)にまつわるのはその名のとおり羊神社(愛知県)です。延喜式神名帳にも記される由緒ある古社です。その昔、群馬の領主「羊太夫」が奈良の都へ上る途中、この地の屋敷に立ち寄ったときに土地の人々が平和に暮らせるように火の神を祀ったことが羊神社の起こりとされています。狛犬ならぬ狛羊をはじめ、境内に多くの羊がいることで可愛らしさが人気です。
酉(とり・鳥)にまつわるのは石上(いそのかみ)神宮(奈良県)です。古事記や日本書紀でも登場するように、暁に時を告げる鶏は神の使いとされてきました。石上神宮でも神鶏として敬われ、天然記念物の東天紅や烏骨鶏などおよそ30羽が境内各地で見られます。
ここで紹介したのはほんの一部です。干支にちなんだ社寺はまだまだあります。その年の干支や自分の干支にちなんだ神社を探してお参りすると、ご利益とともに新しい発見があるかもしれません。
神奈川 × 工芸
自然美と職人技の融合。
お正月の風物詩「箱根駅伝」でも知られている小田原・箱根は旧東海道の宿場として栄えました。古くから箱根山系の豊かな自然を生かした木工細工が盛んで、江戸時代から旅人の間で人気を集めていました。今も箱根寄木細工や小田原漆器、組子細工など、挽物や指物の高い技術が継承されています。
組子細工は、入れ子細工とも呼ばれ、ろくろを回しながら木を挽く挽物細工の一つです。一回りずつ小さくした同じ形のものが入った組子細工を作るには、熟練技術と根気を要します。江戸時代には11個の入れ子の卵が入った「十二卵」が人気を博し、明治時代になるとこれを模した「七福神」が作られるようになりました。実はロシア人が持ち帰った七福神がマトリョーシカの起源になったとも伝えられています。
箱根寄木細工は、江戸時代末期に箱根町の畑宿が発祥です。樹種豊富な箱根山系らしい、様々な木々の色を生かした緻密な幾何学模様が他にはない工芸品として、国の伝統的工芸品に指定されています。
寄木細工を楽しむスポットとして、寄木細工や木象嵌を展示する本間寄木美術館があります。ここでは、展示品の鑑賞以外に工房の実演見学、寄木細工の体験ができます。寄木細工専門店の箱根丸山物産でも寄木細工を代表する「秘密箱」の体験工作が可能です。
木工細工は実用的な物も多く、小田原・箱根らしさあふれるお土産にとして喜ばれています。