春立つと書いて「立春」。暦の上では春が始まり、「梅見月」と呼ばれる2月に入ります。まだ冷たい空気の中、梅の香りとともに、春の色合いが少しずつ濃くなっていきます。禅寺の門には「立春大吉」と書かれた張り紙を見かけることも。字形が左右対象で、縁起が良いとされる言葉です。町には立春にちなんだ和菓子やお酒などの縁起物が並び、人々は無病息災、そして幸せを願います。その町ならではの縁起物を見つけるのも、旅の楽しみの一つです。
※観光施設などの営業状況、およびイベントなどの開催状況については、お客様自身で事前にお問い合わせをお願いします。
全国 × 和菓子
五感で味わう早春の和菓子。
四季の移ろいや彩りを私たちに感じさせてくれる和菓子。特に京都では、茶道と結びつき和菓子が発展した場所。老舗店が数多く点在し、和菓子づくりを体験できる店舗もあります。ため息が出るほど綺麗で繊細な和菓子を探しにお出かけしませんか。
和菓子は水分量によって、大きく生菓子、半生菓子、干菓子に分類されます。日常でいただく和菓子と異なり、茶席やお祝いの席、おもてなしの席で用いられるのが上生菓子。季節に合わせて、繊細かつ高度な技術を駆使して作られます。
上生菓子を代表する生地が「練切」と「こなし」です。練切は、白餡に求肥(ぎゅうひ)などを加えて練ったもの。山芋など薯蕷(じょうよ)をつなぎとして練切を作ることもあります。「こなし」は白あんに小麦粉を加えて練って蒸したもので、京都でよく使用されています。練切は色合いが魅力で、例えば「春がすみ」は、たなびく霞を白い餅生地で表現。中から桃色が透けて見える、目にも美しい上生菓子です。柔らかい緑色の早蕨や早春に黄色や白の花を咲かせる水仙などが熟練の職人の手によって表現された上生菓子は、大切な人への季節のプレゼントにもぴったりです。
また、1年の厄除けの願いが込められたお札の「立春大吉」にちなんだ、縁起ものの「立春大福」も外せません。大福は、多くの人に愛されている和菓子のひとつ。一口ほおばれば、思わず笑みがこぼれます。まだ寒い日が続きますが、見どころが多い京都で旅の途中でホッと一息、熱いお茶とともに、少し早い春の訪れを和菓子で感じてみませんか。
三重 × 花
梅を愛でて春を詠む。
立春の冷たい空気の中、芳しい匂いを漂わせながら咲く梅の花。梅にはさまざまな異称があることをご存じでしょうか。梅は、春の訪れを知らせる「春告草」、東からの暖かい風を待つ「風待草」とも呼ばれます。奈良時代に梅の花が中国から持ち込まれると、貴族たちはこぞって梅を愛でました。
万葉集、枕草子、源氏物語など、古くから詩歌の題材として詠まれています。近世に入ると梅干し作りが盛んに行われるようになり、各地に梅の名所が誕生。庶民にも親しまれるようになったのです。
中でも三重県には、いなべ市農業公園や結城神社など、美しい梅のスポットがたくさん。また、鈴鹿の森庭園の「しだれ梅まつり」など、県内の各地で梅まつりが開かれます。しだれ梅まつりでは八重咲の「呉服(くれは)枝垂」、特に樹齢100年を超える「天の龍」「地の龍」が見どころのひとつです。
いなべ市農業公園は4000本の梅が植えられている、東海地方でも最大級の規模を誇る場所。高台から、咲き誇る梅を一望できます。
みんなでお酒を飲みながらワイワイ盛り上がるお花見も楽しいですが、今年はしっとりと香りを楽しむ「梅見」はいかがでしょうか。
全国 × 日本酒
縁起酒、立春朝搾り。
「立春朝搾り」とは、立春の早朝に搾った生原酒を、その場で瓶詰めし、その日の夜に飲める新鮮なお酒です。近隣の神社で無病息災、家内安全、商売繁盛などを祈願した、縁起の良いお酒として販売されます。毎年、全国の都道府県から数十軒にもおよぶ蔵が参加し、立春朝搾りを行います。酒蔵の近くの日本名門酒会加盟酒販店が出荷作業を手伝い、顧客に届けるというスタイル。その土地でしか味わえないのがポイントです。
立春朝搾りは、毎年、東海エリアをはじめ、日本全国で展開されるため、各地の蔵の立春朝搾りを楽しむことができます。いずれも、その土地の寒冷な気候や清流を生かして造られた銘酒です。
さて、美味しいお酒を飲むと気になってしまうのが「このお酒は、どうやって造られているのだろう?」ということ。一般的に12月から翌年3月にかけ、各地の酒蔵で日本酒が醸造されます。そしてこの時期に合わせて、見学や試飲を受け付けている酒蔵も多くあります。酒蔵見学は、実際の酒造りを間近に見られる貴重な機会。蔵の歴史や銘柄の由来を知った上で味わうと、さらにお酒のうまみを感じられるはずです。