気温の低い朝を迎えると、まさに霜が降りるような時期となります。寒さが増すにつれて紅葉がいちだんと進み、燃えるような赤色に染まります。美しい景色を求めて、紅葉の名所へ出かけませんか。歴史ある寺社仏閣や自然豊かな公園など、そこにしかない切り取りたい景色があります。また、11月は茶人にとってお正月ともいえる時期です。紅葉を楽しみつつ、お茶の世界に触れる大人の旅はいかがでしょうか。


※観光施設などの営業状況、およびイベントなどの開催状況については、お客様自身で事前にお問い合わせをお願いします。

可睡斎の紅葉(12月頃) イメージ
可睡斎の紅葉(12月頃) イメージ

静岡 × 紅葉
秋を愛でつつご利益めぐり。


山野が赤や黄色に色づく秋の紅葉は、春の桜と同様に人々を楽しませる自然の娯楽。とりわけ、寺社仏閣と紅葉は風情ある景観を作り出す組み合わせです。静岡県袋井市の遠州三山も知る人ぞ知る紅葉の名所です。

遠州三山は、袋井の古刹である法多山(はったさん)・可睡斎(かすいさい)・油山寺(ゆさんじ)の総称です。法多山尊永寺は、厄除けのご利益で知られるお寺で、仁王像がにらみをきかせる仁王門はじめ、四つの文化財を有しています。広大な境内ではモミジやイチョウなど、一面に降り注ぐような紅葉を楽しめます。歩き疲れたら茶屋で江戸時代から親しまれている「厄除だんご」をどうぞ。

可睡斎は徳川家康公とゆかりの深いお寺。秋葉信仰の総本山でもあり、火防の仏様として信仰を集めています。境内は10万坪と広大で、すべて見て回るには数時間を要するほど。特に紅葉の季節には近年植栽したモミジと境内の御堂との調和を楽しみたいものです。本堂や御真殿のほか、武田勢に追われた家康公が隠れて命拾いしたと伝わる「出世六の字穴」、おなかをさすると福を招くという大黒様「おさすり大黒」が見どころです。

油山寺は、目の霊山として有名なお寺です。孝謙天皇が眼の病にかかった際、本尊の薬師如来に眼病平癒を祈願し、滝の水で眼を洗ったところ病が完治されたといわれ、現在も「るりの滝」として見ることができます。また、1,500本と三山の中では一番モミジが多く、山門や参道を覆いつくす赤や黄、緑色の見事なグラデーションを楽しめます。

遠州三山はいずれも境内は自然豊かで、四季それぞれに異なる表情を見せてくれます。特に、秋は三山合わせて約3,500本のモミジが美しく、11月下旬以降になれば「紅葉ご利益めぐり」イベントやライトアップが行われ、紅葉をより深く楽しめます。


茶道 イメージ
茶道 イメージ

京都 × お茶会
茶人の正月に茶文化を知る。


茶の湯の世界では、10月の終わりから11月の始めにかけて「炉開き」が行われます。炉とは、茶席で湯をわかすために使う囲炉裏のことで、それまで閉じていた炉に火が入ることを炉開きといいます。無事に一年を迎えられたことに感謝する意味があり、茶人のお正月ともいわれるほどおめでたい行事なのです。

炉開きでは、餅の中に小豆やゴマの入った「亥の子餅」やぜんざい、お汁粉などを食する習慣もあります。また、茶壷の封を切ってその年の新茶を点てる「口切り」もこの時期に行われます。宇治市の縣(あがた)神社で、毎年11月5日には献茶祭があり、茶壺の口切り、献茶式が開かれるなど、まさに茶文化にふれる絶好の季節。

そもそも現在の茶道は、千利休が大成させたものとしてよく知られているのはご存知のはず。京都には、表千家・裏千家・武者小路千家をはじめ、利休の流れをくむ家元が多く集まります。歴史を紐解けば、京都の宇治が緑茶の発祥地であり、まさに「お茶といえば京都」なのです。
そして、年中行事や季節感を大切にしてきた京都では、茶文化の発展とともに洗練された和菓子が作られていき、三大和菓子処としても知られています。

京都では、お茶屋さんや和菓子店などで気軽にお茶席体験、抹茶体験をできます。お茶文化の奥深さを知ると、お茶と和菓子もより味わいが増していくことでしょう。


箕面公園(11月頃) イメージ
箕面公園(11月頃) イメージ

大阪 × 紅葉
都会からすぐ会える絶景。


都会のイメージが強い大阪ですが、意外なことに大阪市内から電車で30分程度の距離に紅葉の名所「箕面公園」があります。箕面公園は、明治の森箕面国定公園の一角に位置しており、箕面大滝と紅葉で知られています。「森林浴の森100選」に選定されるように、豊かな森は季節ごとに表情を変化させながら、この時期は美しい紅葉で人々を楽しませてくれます。

公園入口から箕面川の渓流沿いの遊歩道を歩くこと40分ほどで園内随一の景勝「箕面大滝」に辿り着きます。落差33mの滝は「日本の滝百選」に選定されており、その美しい姿と滝の落ちる音に癒されずにはいられません。 箕面公園に来たら、もう一つ訪れたい場所が勝尾寺です。明治の森箕面国定公園の中心にあるこのお寺は、受験からスポーツ、選挙、商売まで勝運の寺として信仰を集めてきました。絵馬の代わりにダルマに願いを込める「勝ちダルマ」も有名です。

勝尾寺はこの時期、約8万坪の境内が鮮やかな紅葉で染まり、美しい光景が広がります。参道の紅葉のアーチも見事です。11月の土日祝はライトアップされ、幻想的な美しさを演出します。

箕面を訪れたなら伝統の銘菓「紅葉の天ぷら」も欠かせません。その昔、箕面山を訪れる旅人に振舞われたことが始まりで、無農薬栽培で育てた紅葉の葉を秘伝のたれにつけて揚げたもの。かりんとうのような風味は紅葉狩りのおともにぴったりです。