変わりやすく気まぐれだった春の気候が落ち着いて日差しがだんだんと力強く感じられるようになると二十四節気で「穀雨」と呼ぶ晩春を迎えます。この時期より後に降る雨が、大地の穀物をたくましく育てるようにと願いのこもったことばの通り、米どころで始まるのは田植えの準備。八十八夜を迎えた茶畑で新茶の収穫が盛んになるともうすぐ夏がやってきます。
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静岡・京都・三重 × 体験
目にも鮮やか新芽の茶畑。
穀雨の終わり頃、「立春」から数えて八十八日目の「八十八夜」は春から夏に移る節目の日です。唱歌『茶摘』で「夏も近づく八十八夜〜」と歌われるように、この時期は茶摘みのシーズンを迎えます。古来より八十八夜に摘まれた新茶は不老長寿の縁起物として珍重されてきました。新茶はその爽やかな香りと、苦みや渋みのもととなるカテキンやカフェインの少なさ、旨みと甘みの成分であるアミノ酸の豊富さが特徴です。
お茶は全国各地で栽培されていますが、東海道沿線にある3つの有名な産地をご存知でしょうか?1つ目は日本一のお茶どころ静岡県の「静岡茶」です。静岡県内では産地ごとに香りや味わいが異なるブランド茶が作られ、主に煎茶や深蒸し茶の生産が主流です。
2つ目は「伊勢茶」のブランドで知られている三重県です。栽培面積・生産量は、静岡県、鹿児島県についで全国第3位(令和元年※)。南北に長い三重県では産地の気候を最大限に生かして、北勢地方ではかぶせ茶、南勢地方では煎茶をはじめ深蒸し煎茶と、異なるお茶を生産しています。
3つ目は高級茶の産地として名高い京都府南部の「宇治茶」です。宇治茶は京都府内で京都の職人によって製造加工されたお茶のことで、煎茶を中心に玉露や抹茶が生産されています。
初夏の訪れを告げる新茶ですが、お茶摘みのシーズン中は各地で茶摘みと手もみ体験を楽しむことができます。この時期だけの特別な体験や初々しい新茶の香りを通して「旬の季節」を感じてみるのはいかがでしょうか。
※出典:農林水産統計
神奈川 × 花
香り高く揺れ咲く藤。
桜が見頃を終える4月下旬〜5月上旬頃、ゴールデンウィークに見頃を迎える藤の花。やわらかな香りと薄紫色の垂れ下がる花の美しさから、万葉集や枕草子にも詠われている日本古来の花です。
都内からも気軽に足をのばせる神奈川県の藤の名所は、春のお出かけにぴったりです。藤沢にある白旗神社は、関東地方を開拓された神様・寒川比古命(さむかわひこのみこと)と源平合戦の英雄・源義経を祀る神社です。白色の花が珍しい「義経藤」と、薄紫色の花が咲く「弁慶藤」があり、花房が1mにもなる花の盛りは圧巻の一言です。境内には、触れると「健康になって病気をしない」と言われている弁慶の力石や、源義経鎮霊碑など義経ゆかりの史跡が点在し、こちらも見逃せません。
横浜市中区にある三溪園(さんけいえん)では、広大な敷地の日本庭園に咲く藤の花を楽しめます。
三溪園は生糸貿易により財を成した実業家である原三溪により明治39年(1906年)に開園されました。園内にある大池周辺では、藤棚の下に置かれたベンチに座って美しい庭園を望むことができます。
また、織田信長の弟・織田有楽の作といわれる茶室・春草廬(しゅんそうろ)前にも藤棚があり、滝のように垂れ下がる優雅な藤と歴史的建造物が見事な調和を生み出しています。この他にも京都や鎌倉などから移築した17棟の歴史的建造物が、美しい自然とともに癒やしの空間を織りなしています。
藤の花言葉は「優しさ」。春風に揺れて咲く優美な姿を眺めれば、誰もが優しい気持ちになるからでしょうか。その穏やかな香りに包まれながら、春の名残を慈しむ旅にでかけましょう。